半導体産業の拡大と強化に国をあげて注力する中国。その中国が現在、焦点を当てているのがメモリ分野だ。
中国が米国半導体企業のM&A交渉で存在感を増していることは、大きく報道されることはなかったものの、2016年の重大なビジネスニュースのうちの1つであった。2017年にもそのような傾向は続くとみられる。
中国の「メモリ技術を手に入れたい」という貪欲な意欲はいまだに満たされていない。その上、国産のメモリチップを生産する計画も実現していない。
中国のメモリチップ生産計画は、不完全な状態ではあるものの、動向を注意深く見守ってきた観測筋の知るところとなった。観測筋が次に注目するのは、Micron Technology、Intel、Samsung Electronicsといった世界規模のサプライヤーのうち、中国との技術ライセンス契約や合弁企業の考案、交渉で最初に動くのはどの企業かという点だ。
少数の業界アナリストがEE Timesに示唆したところによると、この“ドラマ”の背景には、Samsungによるメモリ市場の独占状態を何とか最小限に抑えたいとする複数のプレイヤーの思惑があるという。中国にとっても、韓国企業が勝ち続けるのは必ずしも喜ばしいことではないだろうから、そうしたプレイヤーの思惑を支援できるというわけだ。
IC Insightsの市場調査部門でシニアアナリストを務めるRob Lineback氏は、EE Timesに対し「(PC、データセンター用サーバ、スマートフォン、その他汎用向けの)DRAMおよびNAND型フラッシュメモリは、中国において重要なIC市場に成長した。中国でメモリに照準が当てられていることは理にかなっている」と語った。
確かに、中国は第13次5カ年計画で、ロジックからメモリ、アナログ、FPGA、電源管理IC、半導体製造装置、CAD、EDAツールまで幅広く網羅する包括的な半導体業界の構築を目標として掲げていて、その実現に向けまい進している。
だが、そうしたメモリへの野心によって、中国のジレンマがさらけ出される格好になった。
East-West CenterのシニアフェローであるDieter Ernst氏によると、メモリ市場は、輸送、医療、環境分野におけるIoT(モノのインターネット)およびAI(人工知能)用途において大きな可能性を持っているという。Ernst氏は、中国にとって難しい難しい問題として、「中国企業がどれくらい素早く、どの程度のコストで、コアなメモリ技術を手に入れられるか」という点を挙げた。
EE Timesは次のような疑問を提示した。
そしてErnst氏は、最も重要な疑問を投げ掛けた。最終的に全てを成し遂げられたとして、「中国は、高いスキルを備えた経験豊富なエンジニアをまとめ上げ、突然手に入れた高度なメモリ技術を十分に活用できるのか」という点である。
一方、中国だけがこうした問題に直面しているわけではない。中国以外のメモリチップベンダーは、中国と提携せずにメモリ事業を継続するだけの財務的体力があるのかどうかを自問していることだろう。
問題なのは、中国市場へのアクセスだけではなく、現在、メモリ開発および製造において膨大な設備投資が不可欠とされ、その金額も増加の一途にあるという点だ。米国シリコンバレーに拠点を置く、ある半導体メーカーの経営幹部は、匿名を条件にインタビューに応じ、「Micron Technologyや東芝などのメーカーは、中国と協業するための方法を見つけられなければ、(メモリ事業において)脆弱(ぜいじゃく)になる恐れがある」と述べている。
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