メモリについて別の角度から見てみると、「もし中国が現在の公約を実現した場合、半導体業界では今後数年の間に、フラッシュメモリの過剰生産が起こる可能性がある」という問題が浮上する。
米国の市場調査会社であるIC Insightsでマーケットリサーチ担当バイスプレジデントを務めるBrian Matas氏は、最新レポートの中で、「2016年のフラッシュメモリ市場は、設備投資額が前年比で43%増加し、業界全体の中で最も高い増加率を記録する見込みだ。しかし、これまでの先例から、設備投資額が増加し過ぎると、過剰生産や価格の下落を引き起こす恐れがある」と警告する。
Matas氏は、3D NANDフラッシュの生産能力を大幅に増強する計画を立てているメーカーとして、SamsungやSK Hynix、Micron Technology、Intel、東芝/SanDisk、XMC/Yangtze River Storage Technologyなどの他、中国の新興企業を数社挙げている。同氏はレポートの中で、「IC Insightsとしては、将来的に3D NAND市場の需要が過剰になる危険性がますます高まっていると確信している」と指摘する。
EE Timesはここ数週間で、半導体業界の観測筋や米国の学術関係者、中国のアナリストなどにインタビューを行い、中国のメモリ企業や投資ファンド、現在進行中の技術移転、中国との取引拡大を狙う外国の技術メーカーなどが複雑に絡んだ問題について、解決の糸口を探そうと試みた。
まずは現在、中国でメモリチップを製造しているメーカーについて取り上げたい。
このようなメーカーとしては、中国陝西(せんせい)省西安市の自社工場で3D NANDフラッシュを製造するSamsungや、中国江蘇省無錫(ウーシー)の工場でDRAMメモリを製造するSK Hynixの他、大連工場で3D NANDフラッシュの生産を加速しているIntelなどが挙げられる。
一方、IC InsightsのLineback氏が指摘するように、ファウンドリーであるSMICは、5年以上前にDRAM製造から撤退している。
同氏は、「中国国内のメモリチップメーカーは、今のところまだ小規模だ。しかし、中国では現在、中国National IC Industry Investment Fund(Big Fund)や地方政府、未公開株式(プライベートエクイティ)投資ファンドなどからの資金提供を受ける新興メモリチップメーカーが、注目を集めている」と警告する。
(後編に続く)
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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