AI(人工知能)に対する注目度の高さは、2017年も続くようだ。2017年は、ディープニューラルネットワークの実現に向けて、より高性能な推論エンジンの需要が高まると専門家は指摘している。
ディープラーニング(深層学習)は2016年、コンピュータ業界の話題を集めてきた。専門家は、「2017年になると、ディープニューラルネットワークの実現に向けて、より高性能、高効率な推論エンジンの需要が高まる」と指摘している。
ディープラーニングシステムは現在、ネットワークを構築するための大規模な計算処理や、トレーニング用のビッグデータセット、目的の達成に向けた大規模コンピュータシステムへのアクセスの向上に活用されている。
残念ながら、ディープラーニングシステムを自動車やドローン、IoT(モノのインターネット)デバイスなどの組み込みシステム上で効率的に実行するのは簡単なことではない。組み込みシステムの処理能力やメモリサイズ、バンド幅は通常、限定されているからだ。
だが、こうした問題を解消する革新的な技術が開発されれば、ディープニューラルネットワークをエンドデバイスに接続できる可能性はある。
米MovidiusのCEO(最高経営責任者)を務めるRemi El-Ouazzane氏は、「ネットワークの末端へのAIの導入は、今後大きく進むと予想される」と述べている。
CEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)のアーキテクチャ/IC設計/組み込みソフトウェア部門のフェローであるMarc Duranton氏は、EE Timesが最近行ったインタビューで「エンドデバイスへのAIの導入をけん引する要素は何か?」という質問に対し、「安全性とプライバシー、コストだ。これらの要素がそろえば、エンドノードでデータが処理されるようになるだろう」と答えた。Duranton氏は、「できるだけ早くデータを情報に変換する必要性が高まっていく」と予想している。
Duranton氏は、「自動運転車の場合、自動運転機能の安全性を追求するのであれば、常時接続ネットワークに依存すべきではない。また、高齢者が自宅で倒れた場合は、何が起こったかをその場で検証、確認すべきである。これは、プライバシー保護の点で重要だ。ただし、自宅に設置した10台のカメラで収集した緊急事態発生時の画像を全て転送するのではなく、電力とコスト、データサイズを削減する手法が必要だ」と付け加えた。
半導体ベンダーは、このようにさまざまな用途でより良い推論エンジンの需要が高まっていることを認識している。
ビジョンプロセッサ「Myriad 2」を手掛けるMovidiusや画像処理プロセッサ「EyeQ 4」「EyeQ 5」を手掛けるMobileye、車載向け人工知能エンジン「DRIVE PX2」を手掛けるNVIDIAといった半導体メーカーは、組み込みシステム上でより優れたディープラーニング機能を実行できる、超低消費電力・高性能なハードウェアアクセラレータの開発に競って取り組んでいる。
Duranton氏は、「各社のSoC(System on Chip)の開発状況を見れば、ポストモバイル時代の多くの半導体企業にとって、推論エンジンが新たな目標になっていることが分かる」と述べている。
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