半導体産業における中国の脅威について、米政府が報告書をまとめた。中国政府の半導体強化政策を批判しているわけではなく、中国企業による米国半導体企業の買収が、米国の安全を脅かすものになり得る場合もあると指摘し、中国メーカーが市場をゆがめるようなM&A政策を採った場合は、これを阻止するよう提言している。
米国のホワイトハウスは2017年1月6日(現地時間)、米国の半導体産業に関する報告書を発表した。同報告書は、「半導体市場の世界的なリーダーを目指す中国の野望が、米国の半導体産業にとって脅威となる」とはっきりと指摘している。
同報告書は、大統領科学技術諮問委員会(PCAST:President's Council of Advisors on Science and Technology)がバラク・オバマ大統領に宛てて作成したもので、「自国に有利になるように市場をゆがめる中国の政策がもたらす脅威に対処するために、米国の半導体業界は、よりスピーディーに技術革新を進める必要がある」と説いている。
PCASTの共同議長であるJohn Holdren氏とEric Lander氏は、同報告書を添付してオバマ大統領に宛てた文書の中で、「この報告書でお伝えしたい最も重要な結論は、米国は最先端技術を革新し続けることによってのみ、中国の産業政策による脅威を緩和し、米国経済を強化することができるということです」と書いている。
同報告書は、3本の柱で形成される戦略を提言している。「技術革新を阻害しようとする中国の産業政策に対抗すること」「米国の半導体企業のビジネス環境を改善すること」「次の10年間の半導体技術を変革させるような革新を促すこと」だ。だが、それには、新たな生体防御システムや医療技術の開発という“壮大な挑戦”に向けた資金が必要となる。こうした技術は、技術自体にメリットがあるだけでなく、半導体技術の進歩や適用性の拡大につながる。
オバマ大統領は2016年10月、半導体の専門家を集めて、米国の半導体産業に影響を及ぼしている重要課題に関する調査を行っている。以来、その報告書の発表が待たれていた。Wall Street Journalは今週初め、「ホワイトハウスが発表した報告書は、米国の半導体関連企業への中国の投資を抑制する戦略を提言している」と伝えた。
同報告書は、米国の半導体産業への中国の投資を制限するための具体的な提言は行っていない。だが、「対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the U.S.)のような国家の安全を守る組織を活用し、競争の阻害につながる政策を進める中国が、先端技術や米国に拠点を置く企業に簡単にアクセスする機会を与えないよう同盟国と協力すること」を提言している。
「中国の政策は、技術革新を妨害し、米国の市場シェアを減少させるような形で市場をゆがめている。米国の国家安全を危険にさらされる可能性もある」と同報告書は指摘している。
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