米半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)のプレジデントを務めるJohn Neuffer氏は、EE Timesのインタビューの中で、「この報告書は、米国の半導体業界が直面している2つの大きな課題を明確に指摘している」と述べた。2つの課題とは、技術革新を起こすにはコストや複雑性が増しているということと、中国が世界半導体市場に参入していることだ。
Neuffer氏は「中国が、自国の半導体産業を強化することそのものについては、積極的に支援したい。だが、そうした強化政策はきちんとした市場原理に基づいて行われるべきだ。中国がこれまで行ってきた強化政策の中には、公平に見えないものもある。率直に言えば、一部の業界関係者は、中国のやり方に辟易(へきえき)している」と述べた。
中国は、自国の半導体産業を強化するという野心に燃えている。自国の大規模な市場を支えられる巨大な半導体産業を構築し、グローバルプレイヤーとなることも狙っている。中国政府は2016年、今後数年間で1610億米ドルを半導体産業の強化に投入すると発表した。
過去2年間、この強化政策は、政府の資金力にものを言わせて、欧米の半導体メーカーを買収する方法で行われてきた。そのため、米国は中国企業によるM&Aに対して慎重になっており、実際、幾つかの買収案件は、CFIUSのレビューに基づき却下されている。
2016年12月には、オバマ大統領が大統領令を発して、中国企業による買収を阻止している。具体的には、中国のFujian Grand Chip Investment Fund(福建グランド・チップ・インベストメント・ファンド)が、ドイツ半導体メーカーAixtronが米国内に持つ子会社を買収しようとしていた案件だ。だが、買収の対象に軍事用技術が含まれていたことから、米国の安全に関わるとして大統領が直接、買収を却下した。
ホワイトハウスの報告書には、「米国は、中国の動きに過剰に反応する必要はないが、中国企業が市場のルールを破って買収などの政策を採ろうとしてきた場合は、断固たる態度で阻止すべきだ」としている。
同報告書の内容は、こちらのリンクから読むことができる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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