2016年も終わることがなかった半導体業界の“M&A”の嵐――。2017年もこの業界再編は続くのだろうか。市場調査会社のIHSグローバルで主席アナリストを務める南川明氏に聞いた。
2016年も終わることがなかった半導体業界の“M&A”の嵐。ソフトバンクグループによるARM買収、Analog DevicesによるLinear Technology買収、QualcommによるNXP Semiconductors買収など、今でも鮮明に記憶が残るニュースが続いた。
2017年以降も、この半導体業界の再編は続くのだろうか。市場調査会社のIHSグローバル 日本調査部ディレクターで主席アナリストを務める南川明氏に話を聞いた。
EE Times Japan(以下、EETJ) 2016年も業界再編が続きました。
南川氏 1つの要因は、これまで成長を続けてきたPC・スマートフォン(スマホ)市場が低迷し、自動車や産業機器、IoT(モノのインターネット)市場にシフトしていることが挙げられる。PCやスマホ市場でNo.1を獲得してきたIntelやQualcommは、従来のビジネスから変わらなくてはいけない状況となった。NO.1となるためには、一から技術を開発するのではなく、M&Aで技術を手に入れるといったスピード感が必要になるからだ。
半導体業界は30年間成長を続けてきたが、市場は成熟し始めている。日本がシェア1位を誇り、20社ほどのメーカーが存在していたDRAMも、今ではトップ2〜3社にシェアが集中している状況だ。IoTでは新たなプレイヤーが登場し、ゲームチェンジが起こるかもしれない。しかし、この業界再編はグローバル全体でまだまだ続くと考えている。
EETJ 日本の動向はどうですか?
南川氏 日本は市場のシェアを落とし続けてきており、半導体メーカー同士が統合しても順調には進まなかった。現在のトレンドは、日本の強みとなる電子部品やメカトロニクス分野の企業が、半導体メーカーを取り込むことである。電子部品もメカトロニクス分野も、製品単体を売るだけでは成長が見えなくなってきた。半導体と組み合わせることで、フットプリントをより良くすることが期待されている。日本は材料メーカーも競争力が高いため、これらが組み合わさると良い方向に動くだろう。
EETJ これまで日本の半導体メーカーは何が問題だったのでしょうか。
南川氏 スピード感や資金力などの問題もあると思うが、経営層のマネジメント力と考えている。日本の半導体メーカーは、これまで自分の陣地を守ることに必死だった。経営層が変わることができたならば、状況はどんどん変わっていくのではないか。
EETJ 成長分野に自動車や産業機器、IoT市場を挙げていました。これらの分野において、2016年のM&Aに対する見解を聞かせてください。
南川氏 Qualcomm+NXP Semiconductorsは、相当脅威になる。車載半導体シェアランキングの上位10社を見ると、ほとんどが無線チップを持っていない。他の上位10社が、Qualcommと同様に無線チップメーカーを買収する可能性は考えられる。
EETJ ルネサス エレクトロニクスがIntersilを買収しました。
南川氏 買収としては他と比べると小粒で、業界的な影響はあまりないだろう。
EETJ 産業機器分野は、どのように見えていますか。
南川氏 Texas Instrumentsがシェア1位となっているが、割合でみると10%以下である。多くのメーカーが存在しており、No.1を獲得するために大手企業によるM&Aが進むと考えている。特にアナログとパワー系だ。Analog DevicesがLinear Technologyを買収したことが1つの例となる。STMicroelectronicsやMaximが次の対象となるだろう。20〜30%のシェアを持つNo.1が登場するまでM&Aは続くのではないか。
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