米国で開催された「Industry Strategy Symposium(ISS)」(2017年1月8〜11日)では、EUV(極端紫外線)の動向から半導体市場の今後まで、幅広く議論が行われた。
GLOBALFOUNDRIESの主任技術者であるGary Patton氏は、日本のレジストメーカーJSRが作成したロードマップから、今後2〜3年はEUV(極端紫外線)を量産工程で導入する準備は整わないと見込んでいる。EUVが導入されればマスクの数が20減り、サイクル時間は30日短縮するとみられている。
一方でベルギーIMECのAn Steegen氏は、「EUVは、そろそろ実現のメドがつく時期に達したといえる」と述べる。IMECはこれまで長年にわたり、先駆的な技術開発をサポートしてきた研究機関である。
Steegen氏は、EUVにおいて引き続き開発が必要な領域を解説した。いずれは、稼働時間(アップタイム)が約90%のシステム上では、250Wの光源が必要になるという。
同氏は、「現在、80Wの光源を備えた7台の装置が稼働中で、ここ4週間の稼働率は80%以上だ。光源を125Wにアップグレードできる日も近い」と述べる。
GLOBALFOUNDRIESのPatton氏は、「根本的な問題としては、EUVの光が装置内でほとんど吸収されてしまう点が挙げられる」と指摘する。
現在も、ラインエッジの粗さを低減するなど、3nm以降にも耐え得るようなさまざまなオプションの開発が進められている。
最重要課題とされているのが、ペリクル(防じんカバー)をつけたマスクの欠陥を低減することだ。Steegen氏は、「ペリクル材料における光の透過率は90%以上が求められている。250Wの光源でも、優れた熱的および機械的安定性を実現できるペリクルが不可欠とされる」と述べる。
研究者たちは、材料が露光によって薄くならないようにするために、カーボンナノチューブでペリクルをコーティングする実験を行っている。このようなペリクルが開発されれば、業界としては、その供給源を用意する必要があるだろう。
EUV装置の内部は真空状態だが、それでもペリクルが必要とされるのは、一部の粒子がマスク上に落ちる可能性があるためだ。Patton氏は、「許容範囲が極めて狭いため、例えばマスクの大きさが米国カリフォルニア州くらいだとすると、ゴルフボール程度の大きさの粒子が、致命的な結果をもたらす可能性がある」と述べる。
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