IoT時代の通信方式は適材適所で選ぶのが良い――。Silicon LaboratoriesがIoT時代の通信方式として提案するのは“マルチプロトコルソリューション”である。同社日本法人でIoTスペシャリストを務める水谷章成氏に、マルチプロトコルの5つの定義とその現状、課題について聞いた。
「IoT時代の通信方式は1つに確定するのではなく、適材適所で選ぶのが良い」
Silicon Laboratories(シリコン・ラボラトリーズ/以下、シリコンラボ)の日本法人でIoTスペシャリストを務める水谷章成氏は、こう指摘する。Wi-FiやLTE、Bluetooth、ZigBee、Thread、Z-Wave、Wi-SUNなど、それぞれ固有の特徴を持った通信プロトコルが多く存在している。直近では京セラコミュニケーションシステムが、フランスのSIGFOXと提携し、2017年2月から国内でサービスを開始しようとしている。
多くの通信プロトコルが乱立する中、シリコンラボがIoT時代の通信方式として提案するのは“マルチプロトコルソリューション”である。同社は2016年2月から、ARM-Cortex-M4コアを持つマイコンに、RFトランシーバーを組み合わせたマルチプロトコルSoC「Wireless Gecko」を展開している。複数のプロトコルを動作できるアーキテクチャが搭載されており、用途に応じて3つの製品をそろえているのが特長だ*)。
*)関連記事:IoTデバイス設計を簡素化、マルチプロトコルSoC
マルチプロトコルを扱う上で重要なのは「共通化」という。Wireless Geckoは、プリント基板やソフトウェアツール群、MCUドライバーなどがプロトコルに限らず共通で使用可能だ。その上に、各通信プロトコルスタックを提供している形となる。
同社はこれまで、各通信プロトコルスタックの提供を強化するため、積極的なM&Aを展開してきた。2012年にZigBee用RF IC大手であるEmber、2013年に低消費電力マイコン「Gecko」で知られたEnergy Micro、2015年にはBluetoothに強みを持つBluegiga Technologies、ZigBee/Threadモジュールを提供するTelegesisを買収した。水谷氏は「ハードとソフトの両面でフルサポートした製品を提供できる」と語る。
同社は、マルチプロトコルのシナリオタイプに下記の5つを定義している。
1つ目のシングルは、プロトコルを変える機能がなく単一プロトコルで動作する。どのベンダーのICも同じように動作する、一般的な無線装置の在り方となる。
2つ目のプログラマブルはハードウェアが共通で、製造時に書き込むプログラムによってプロトコルを選択する。開発リソースの削減につながるが、エンドユーザーから見ると1度書き込んでしまうとプロトコルを変更できないため、融通が利かない。
3つ目のスイッチングは、ハードウェアが共通なことに加えて、エンドユーザーがネットワークを活用するときに、どのプロトコルを使うかを選択できる。各プロトコルを自動的に遷移させることも可能だが、水谷氏は「1度リセットしてから、次のプロトコルへ復帰するまでに一定の時間を要する」と語る。開発者目線で見ると、各通信プロトコルで独立したプログラミングが行えるため、難易度はそれほど高くないという。
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