半導体技術の強化を図る中国が、メモリ産業に狙いを定めている。だがメモリは、技術開発にも製造にも膨大な資金がかかる分野だ。中国は、メモリ関連の知識と経験を持つ人材の確保に奔走しているが、「中国は苦しい選択をした」との見方を示す専門家もいる。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
現実に目を向けなければならない時が来た。Tsinghua Unigroupが最近、300億米ドルを投じて中国の南京にメモリチップ工場を建設する計画を発表した。これは、多くの中国の専門家にとっても予想外の動きだったといえる。中国のメモリ製造に関しては現在、中国の武漢に拠点を置く知名度の高いXMCでさえも先行き不透明とされている中、今回のTsinghua Unigroupの発表は、理解し難い動きだ。
しかし、今回のTsinghua Unigroupの南京工場に関する発表は、「世界のメモリ市場を支配したい」とする中国の決意を示しているといえる。
中国は、さまざまな課題が山積しているにもかかわらず、前進し続けている。こうした課題の中でも、特に重大な問題として挙げられるのが、経験豊富なメモリチップ関連のエンジニアが不足していることや、経営の専門家の不足、米国の外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the U.S.)による監視の強化などだ。
中国はここ数カ月の間に、外国企業に対して買収提案を行っているが、いずれもCIFUSからの圧力によって阻止され、断念せざるを得ない結果に終わっている。中国の事業体がこのような圧力を受けた場合、海外のメモリチップメーカーを買収することはほぼ不可能だ。
中国のメディア企業であるSinaは最近、Tsinghua UnigroupのチーフエグゼクティブであるZhao Weiguo氏が、2017年1月初めに行われたセレモニーで語った内容を、以下のように引用している。「Tsinghua Unigroupは2016年に、武漢においてメモリ製造工場の建設に着手した。2017年には、さらに2つの半導体製造工場を、成都と南京に建設する予定だ。これら3つの工場建設プロジェクトへの投資資金は、700億米ドルを超える。Tsinghua Unigroupこそが、IC産業の未来を担う企業だ」
Tsinghua Unigroupの増強計画は、実に素晴らしい。しかし中には、「工場建設とその運営とは別のものだ」とする批判の声もある。特に、3D NAND型フラッシュメモリのような複雑な製品を製造する場合、工場の運営は非常に難しい。
半導体および電機産業のコンサルタントである湯之上隆氏は以前に、武漢の3D NANDフラッシュ工場の建設について、極めて懐疑的な見方をしていた。同氏は、半導体エンジニアとしての経歴を持ち、日本の半導体業界に関する著書もいくつか執筆している。しかし同氏は、2017年1月に行ったEE Timesのインタビューの中で、「最近、中国に材料や半導体製造装置を提供しているサプライヤーから、十分な証拠を得ることができた」と述べ、これまでの懐疑的な見方を否定している。
湯之上氏によると、中国では現在、エンジニアの確保や、半導体製造装置(NANDフラッシュの製造装置が一部不足している)などをめぐる争いが繰り広げられているという。また、中国国内の各都市が、半導体工場を建設する企業を誘致しようと出資金をつり上げるため、地域的な対立関係が強まっているという問題も生じている。
中国のメモリ事業について全体的な分析を進めていくにあたり、まずは現地で台頭しているメモリチップメーカーについて、詳細をまとめてみたい。
米国の市場調査会社であるIC Insightsでバイスプレジデントを務めるBrian Matas氏は2016年末の時点で、中国の主要なプレイヤーとして以下の3社を挙げている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.