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二次元半導体、炭素+窒素+ホウ素で作るムーアの限界を超える(1/3 ページ)

電子材料として注目を集めるグラフェン。厚みが原子1つしかないため、微細化に役立つ材料だ。ところが、グラフェンには、半導体にならないという欠点がある。これを改善する研究成果が現れた。炭素と窒素、ホウ素を利用して、規則正しい構造を備えた平面状の半導体を合成できた。グラフェンへのドーピングなどでは得られなかった成果だ。

» 2017年03月16日 11時30分 公開
[畑陽一郎EE Times Japan]

 炭素(元素記号:C)は結合の仕方が変わることで、さまざまに異なる性質を示す。電子部品への応用が進んでいるのはこのためだ。3次元状に原子が規則正しく結合したダイヤモンドは、ワイドバンドギャップ半導体として利用できる。2次元状に結合するグラフェンは、最良の電子伝導体として役立つ。

 このようにさまざまな性質を示す材料は他にもある。ホウ素(B)と窒素(N)を等量含む材料だ(図1)。3次元状に規則正しく結合した窒化ホウ素は、ワイドバンドギャップ半導体としての性質を示す。物理的な性質もダイヤモンドと似ている。ダイヤモンドに次ぐ堅さを備え、切削材料として適している。

 ホウ素と窒素が2次元状に結合した化合物(h-BN:hexagonal-BN)は、グラフェン同様、完全な平面構造をもつ。厚みは原子1つ分(約0.1nm)。グラフェンを層状に積み重ねたグラファイトが潤滑性を示すように、h-BNもやはり層状に重なった構造を採り、潤滑性を示す。

 だが、グラフェンとの違いもある。導電性がなく、絶縁体なのだ。

図1 炭素と似た性質を示す窒化ホウ素 どちらも六角形状の結合によって凹凸のない平面状の分子を作り出す 出典:本誌が作成

半導体が欲しい

 ドイツのバイロイト大学は2017年2月23日、グラフェンとh-BNの中間の性質を示す物質の合成に成功したと発表した*1)。グラフェンと似た炭素骨格上に、ホウ素と炭素、窒素が規則的に並ぶ平面構造を採る(図2)。六角形状に3種類の原子(B、C、N)が並ぶ分子であることから「h-BCN」と呼ぶ。

*1) 米ネブラスカ大学リンカーン校とポーランドのヤギェウォ大学、米ニューヨーク州立大学、米ボストンカレッジ、米タフツ大学に所属する研究者が協力し、米化学会が発行するACS Nano誌に論文を発表した。
Sumit Beniwal, James Hooper, Daniel P. Miller, Paulo S. Costa, Gang Chen, Shih-Yuan Liu, Peter A. Dowben, E. Charles H. Sykes, Eva Zurek, Axel Enders, Graphene-like Boron-Carbon-Nitrogen Monolayers, ACS Nano (2017), DOI:10.1021/acsnano.6b08136.

図2 二次元半導体物質「h-BCN」の分子構造 窒素原子(N)を青色で、ホウ素(B)をピンク色で強調した。記号がない交点には炭素原子が位置する 出典:発表論文に基づき本誌が作成
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