名古屋大学は、カーボンナノチューブの筒状構造を持つ炭素分子「カーボンナノベルト」の合成に初めて成功した。
名古屋大学の伊丹健一郎教授らによる研究グループは2017年4月、カーボンナノチューブの筒状構造を持つ炭素分子「カーボンナノベルト」の合成に初めて成功したと発表した。単一構造のカーボンナノチューブ合成や新たな機能性材料の開発につながるとみられている。
今回の成果は伊丹氏の他、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業の「伊丹分子ナノカーボンプロジェクト」で活動する名古屋大学の瀬川泰知特任准教授、Guillaume Povie博士研究員らの研究グループによるものである。
カーボンナノベルトは、ベンゼン環同士が互いの辺を共有して、筒状の構造を構成した炭素分子の総称である。約60年前に提唱されていたものの、ベンゼン環が筒状になることで大きなひずみを生じるため、合成が難しかったという。
カーボンナノチューブは、その構造の違いによって、導電性や半導体特性、光応答性、強度などの性質が大きく異なる。このため、電子部品として用いる場合、その用途に応じた構造を合成する必要がある。しかし、現行の製造方法だとさまざまな直径と構造を持ったカーボンナノチューブが同時に生成された混合物となる。得られた混合物から単一構造のカーボンナノチューブを分離、精製するための手法も現状では確立されていないという。
そこで研究グループは、「カーボンナノチューブ伸長反応」と呼ばれる合成方法に注目した。有機合成化学によってカーボンナノチューブの部分構造を正確に合成し、それをテンプレート分子として単一構造のカーボンナノチューブへと伸長させる方法である。つまり、ひずみのない環状分子を最初に合成し、次に炭素炭素結合形成反応によって筒状構造に変換するという手法である。
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