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名古屋大、カーボンナノベルトの合成に成功「夢」の筒状炭素分子(2/2 ページ)

» 2017年04月14日 16時00分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]
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安価な炭素原料から、11段階で筒状炭素分子を生み出す

 具体的には、炭素原料として用いたパラキシレンから合成した部品を、順番に結合させていく。これによって、ベンゼン環6個と架橋部位を持つ環状分子を合成した。この時、最終段階で筒状構造に結合する全ての炭素原子に、臭素原子(Br)が結合するよう設計した。反応を促進するためだ。そして、2つの近接した炭素臭素結合はニッケル錯体を用いて切り離し、1つの炭素炭素結合に変換した。この結果、11段階でカーボンナノベルトの合成に成功したという。

カーボンナノベルトの合成経路(概略) 出典:JST、名古屋大学
カーボンナノベルトの合成経路(詳細) 出典:JST、名古屋大学

 研究グループは、合成したカーボンナノベルトを詳細に分析した。X線による構造解析を行ったところ、カーボンナノチューブと同様の筒状構造を持つことが明らかとなった。可視光の吸収および蛍光の分析では、構造の剛直さや筒状構造全体を電子が通る性質を観測した。さらに、ラマン分光法による分析結果から、カーボンナノチューブに極めて近い性質を持つ分子であることが分かった。

左がX線解析で分かったカーボンナノベルトの構造解析図、中央は合成したカーボンナノベルトの固体、右はその蛍光発光。紫外光を当てると赤く光る 出典:JST、名古屋大学

 合成に成功したカーボンナノベルトは、赤色蛍光を発する有機分子であり、発光材料や半導体材料として応用できる可能性がある。また、カーボンナノベルトをテンプレートにした製法で、単一構造のカーボンナノチューブを得ることができれば、軽量で柔軟な形状のディスプレイや消費電力が極めて小さい高集積CPU、高効率のバッテリーや太陽電池などへの応用が期待できるという。

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