米国の原子力子会社の巨額損失により債務超過に陥るなど経営危機を迎えている東芝。経営危機に陥った理由を分析していくと、東芝固有の問題だけではなく、他の日系電機メーカーにも起こり得る共通の課題が見えてくるのだった。
東芝関連のニュースが連日報道されている。米国子会社の巨額損失が会社全体のバランスシートを毀損(きそん)していること、現状に至るまでの経営陣の体制や判断が疑問視されていることなど、同社の今後の見通しについては予断を許さない状況が続いている。だが、そもそもの要因としては、同社が個別に抱える課題と、他の日系電機メーカーにも共通し得る課題に類別できると筆者は見ている。言い換えれば、東芝が陥った状況は決して人ごとではない。他社にも起こり得る問題であることをここで指摘しておきたい。
東芝の事例をおさらいしてみると、3年前の2015年5月8日、2015年3月期通期決算の発表がいつになるか分からない、第三者委員会を設置して会計処理が適切だったかどうかを精査する、と同社が発表したことに端を発している。これが同社株のストップ安を引き起こしたわけだが、同時期にシャープと富士通の株もストップ安を記録している。シャープの場合はすでに太陽光パネルや液晶事業の悪化が表面化していて、それまでの5年間で株価は80%下落していた。富士通は決算発表時に中期計画を大幅に下回る会社計画を公表したことで、同社の将来性が懸念され「失望売り」がストップ安につながった。
大手電機メーカー8社のうち、3社が同時期にストップ安を記録するなど前代未聞の出来事だったが、いずれも経営陣に対する不信感が原因である点は共通している。3社が抱える問題に程度の差こそあれ、デバイス事業、機器事業、サービス事業、どれも市況が目まぐるしく変化する中で、先手を打てずに後手に回った、経営陣が自社を十分にコントロールできずに市場に振り回された、と投資家に判断された結果なのだ。
東芝に話を戻すと、4カ月後の2015年9月7日、2015年3月期決算を遅ればせながら発表したことで、同社の「不正会計問題」は一件落着したかに思われた。実際には事業売却の交渉や経営体制の見直しなど、しばらく東芝内で混乱が続いていたが、業績も半導体を中心に回復基調にあり、株価もストップ安をつける前のレベルにまで回復していたのである。しかし2016年12月、米国子会社Westing House(WH)の巨額損失の可能性が表面化したことで状況は一変する。東芝株は再びストップ安を記録することになる。
なぜこの問題に気付かなかったのか、WHの実態をちゃんと把握していたのか、あるいは把握していながら公表に至るまでの手順に問題があったのではないかなど、WH問題が発覚した2016年12月から現在に至るまで東芝経営陣に対する不信感が増幅しているのが現状である。
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