東芝は元々財務基盤が弱い。特に大型設備投資が不可欠なメモリ事業を継続する上で、Samsung Electronicsなどの競合と渡り合うためにどのように資金を調達するか、常に頭を抱えていた。2006年にWHを約6000億円もの大金を投じて買収したのも、将来的に東芝の武器になる、という目算があっての決断だったはずだが、これが裏目に出た。その結果、主力であるメモリ事業の継続が困難になった。時計の針を戻すことはできないが、「最悪でもメモリ事業を継続させるための選択肢」を選べなかったのか、と考えたくなるのは筆者だけではないだろう。
2017年3月14日の東芝本社で開かれた会見場の様子。東芝経営陣は、2017年3月期第3四半期決算発表の再延期とともにメモリ事業売却後の成長戦略を説明するも、記者やアナリストからは経営陣の責任を問う声が相次いだ既に台湾企業(Hon Hai/鴻海精密工業)の支配下に収まっているシャープは、自社の体力以上の投資を続けた結果、自力再生が困難な状態に陥った。液晶事業にしろ、太陽光パネルにしろ、継続してきた大型投資を途中で止めるのは非常に難しい経営判断を伴うだろうが、これまでに何度かあったそのチャンスを見逃してきたのは事実であろう。注力してきた事業がコモディティー化し付加価値の追求が困難になった時点で、シャープのビジネスモデルは崩壊していたはずだ。
日系大手電機メーカーは、いずれもコングロマリット(複合企業)体制を維持している点で共通している。コングロマリットは、特定事業の好不調による経営の不安定化を避ける上では一定の効果が期待できるものの、トップから見て各事業の詳細把握が困難であり、経営判断の遅れを伴うリスクがある。
至るところにIoT(モノのインターネット)が活用され、AI(人工知能)が導入され、いわゆる第4次産業革命が進もうとしている現在、コングロマリットの経営体制では迅速な経営判断ができないのではないか、もっと事業現場に近いところで重要な判断が行われるべきではないか、というのが筆者の主張である。何が何でも分社化すべし、とは言わないが、特定事業の詳細を理解できない役員の同意を得るのに時間を要する、などという前近代的な体制で経営している企業に勝ち目があるとは到底思えないのだ。
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“日本のピュアファウンドリ”に本気で挑む三重富士通の勝算Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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