「COMPUTEX TAIPEI 2017」開催前日の記者説明会で、ARMが新型CPUコア「Cortex-A75」と「Cortex-A55」を発表した。最大8種類の異なるCPUコアを1クラスタ上に構成できるアーキテクチャ「DynamIQ」をベースにした、最初のCPUコアとなる。新Cortex-Aシリーズの最大のターゲット市場は、AI(人工知能)だ。
ARMは2017年5月29日(台湾時間)、「COMPUTEX TAIPEI 2017」(2017年5月30日〜6月3日、台湾・台北)の開催に先立つ記者発表会において、新型CPUコアを発表した。ハイエンドの「Cortex-A75」とミッドレンジの「Cortex-A55」である。
同社は今後、AI(人工知能)の導入を加速し、2035年までにARMプロセッサコアを全てのIoT(モノのインターネット)デバイスに搭載するという野心的な目標を掲げており、その実現に向けた取り組みの一環として、今回の新型コアを発表したとしている。
Cortex-A75は、旧世代品と比べて大幅な性能向上を実現しており、Cortex-A55も、性能と電力効率の両方の向上を達成したという。旧世代品、例えば「Cortex-A73」はモバイル用途向け、「Cortex-A72」はサーバ向けといったように、特定のアプリケーション向けに最適化されていたが、新型コアはいずれも、高度にコンフィギュアラブルであることから、これまでのCortex-Aシリーズが対象にしてきた全ての市場に対し最適だという。
両コアとも、ARMがマルチコアプロセッシングを再定義するための手段として推進している最新技術「DynamIQ」をベースとしている。
ARMのCPUグループでマーケティング担当バイスプレジデントを務めるJohn Ronco氏は、「DynamIQは、Cortex-Aクラスタの構築方法を根本的に変える技術だ。マイクロアーキテクチャなどが全く異なる8種類のCPUコアを、1つのクラスタに搭載することができ、電圧領域や周波数が異なっていても動作可能であることから、非常に優れた柔軟性を実現することができる」と述べている。
ARMの既存の「big.LITTLE」は、大型コアと小型コアを組み合わせて、小型コアを可能な限り使うことで消費電力を低減する。ただ、2種類のサイズのCPUコアしか使えず、さらにそれらは2つのクラスタに分ける必要がある上、消費電力と性能に関する設定方法が全く同じでなければならないなど、さまざまな制約があった。
しかしDynamIQは、異なるCPUコアを同じクラスタ上に搭載できるヘテロジニアスな構成となっている。そのため、さまざまなCPUコアの組み合わせが可能になる。また、アップグレードしたメモリサブシステムを搭載することで、異なるコア間のデータフローや、AIタスク向けの特定の新しい命令セットなどにも対応可能だという。
Ronco氏は例として、モバイル分野におけるミッドレンジCPUを挙げている。同分野ではこれまで、Cortex-A53を8個といったように、同一コアだけが使われてきたが、こうした設定は今後、大型コアを1個と小型コアを7個(例:Cortex-A75を1個とCortex-A55を7個)という形に移行していく見込みだという。これによって実装面積はわずかに増加する可能性はあるが、シングルスレッド性能を約2倍に高められる他、アプリケーションの開始時や、さまざまなユーザーエクスペリエンス基準向けとして最適であるため、スマートフォン向けアプリケーションに対して大きな差別化を図れるとする。
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