ARMは、新しいコアは幅広い分野で使用できるとしているものの、鍵となるターゲット市場は機械学習である。ARMは、今後3〜5年でコア性能を50倍向上することでAIの導入を加速することを目標としている。コア性能の向上は、新しいマイクロアーキテクチャの導入やソフトウェアの最適化によって実現したいとする。
Cortex-A55の前世代のCortex-A53は、モバイルから宇宙飛行まであらゆる用途で絶大な支持を得ている。64ビットCPUに最も多く採用されていて、3年間で17億個を出荷し、ライセンシーは40社以上に上る。Cortex-A55は、Cortex-A53と比べて(プロセスノードと動作周波数が同じという条件で比較)性能が2倍になり、電力効率が15%向上した。さらに、機械学習、安全性、信頼性、セキュリティなど新たな機能に対応させるための設定変更も行いやすいという。
Ronco氏は、「Cortex-A53は最大でクアッドコアだが、Cortex-A55はシングルクラスターに8コアまで組み込むことができる。DynamIQでは、これらのコアを性能や電力効率など、重視する機能に応じて構成、最適化できる。キャッシュの3レベル全てにおいて、異なるキャッシュ構成にすることもできる」と説明している。
Cortex-A75はどんな市場にも対応できるが、高性能であることからモバイルや家電、サーバインフラ、自動運転車など用途に使われると予想される。Cortex-A75は最新のインターコネクト技術を適用したシステムに使用した場合、前世代のモバイル向けプロセッサ「Cortex-A73」と比べてシングルスレッドの性能が20%以上、インフラ向けの「Cortex-A72」と比べると40%向上した。
ARMのIR(Investor Relations)担当バイスプレジデントを務めるIan Thornto氏は、「ARMを買収したソフトバンクは、ARMに関して長期的で明確な計画を持っている。ARMは、2035年に1兆台に達すると予想されるIoTコネクテッドデバイスの全てにARMプロセッサを搭載する計画を掲げている」と述べている。
Thornto氏は、「データセンターや通信会社など、ソフトバンクの豊富なネットワーク資産は、はっきりとシナジー効果を生み出している。同社は、家電やインダストリアル、自動車、ヘルスケアなど他部門が既にサービスを展開している市場でも、ARMのAI技術を活用したいと考えている」と指摘した。
同氏は、「ARMは当面は、戦略やビジネスモデルを変更せずに独立した部門として経営を続ける。唯一変わるのは、投資の大幅な拡大によって製品ロードマップの拡充が急速に進むようになることだけだ。ARMは今、よりリスク選好的になり、事業拡張も計画している。
具体的には、今後5年間でイギリスの社員数を倍増する計画だ(必要であれば、その4分の1の人員を買収によって確保することもあり得る)」としている。
Thornton氏は、「ARMの売上高はソフトバンク全体の10%だ。つまり、ソフトバンクの多くの株主にとっては、まだ規模が小さい事業で、このためわれわれは、自分たちの方針通りに自由に投資できている」と述べた。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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