ディスプレイ産業の今とこれからを読み解く新連載「ディスプレイ総覧2017」。第1回は、2017〜2018年のディスプレイ産業、最大の注目点であるスマートフォン向け有機ELディスプレイ市場の展望を紹介する。
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ディスプレイ産業の現状とこれからを、市場調査会社IHS Markit テクノロジーのアナリストが分析、展望するセミナーイベント「IHS ディスプレイ産業フォーラム」が2017年7月、開催される。EE Times Japanでは、同フォーラムに登場予定のIHSマークイットテクノロジーのアナリストにインタビューし、連載「ディスプレイ総覧2017」としてフォーラムよりも一足先にディスプレイ産業の現状とこれからをお届けしていく。
第1回は、IHS Markit テクノロジー シニアディレクターとして中小型ディスプレイ市場を担当する早瀬宏氏に2017〜2018年ディスプレイ市場の最大の注目点について、語ってもらった。
中小型、大型を問わず、ディスプレイ市場最大の注目点を語る上での前提条件がある。それは、2017年後半に発売されるであろうAppleのスマートフォンの新型iPhoneが、これまでの液晶ディスプレイから有機ELディスプレイに切り替えて、新世代のスマートフォンとして登場するということだ。
Appleが有機EL搭載モデルを発売するかどうかについては、当然、正式発表されているわけでもない。有機ELを搭載するというさまざまなリーク情報も信ぴょう性があるとは言えない。ただ、ディスプレイメーカーや部材メーカーの投資状況などから判断すれば、Appleが有機ELディスプレイの採用に向けて具体的に動いているということは間違いないだろうと見ている。
はっきりと言えることは、スマートフォン向けの有機ELディスプレイが2017〜2018年におけるディスプレイ市場最大の注目点になっているということだ。
スマートフォンなどに向けた中小型の有機ELディスプレイの世界シェアは、Samsung Display(サムスンディスプレイ)が95%超を握り、独占状態を築いている状況だ。Samsung Displayは申すまでもないが、Appleの競合であるSamsung Electronics(サムスン電子)グループの企業だ。Appleのみならず、スマートフォンメーカーが有機ELディスプレイを採用しようとすれば、スマートフォン市場で最大シェアを誇る最大の強敵であるSamsung Electronicsに、キー部品の調達を委ねなければならないのだ。
Samsung Electronicsは自社のスマートフォン「Galaxy」に、最先端の技術を使った有機ELディスプレイを使うの必然だろう。逆に言えば、言葉は悪いが、Samsungは自分たち以外には、型落ちの有機ELディスプレイしか供給しないだろう。型落ちの有機EL搭載スマートフォンをもってして、市場で先端有機ELのGalaxyと競争しようというのは、極めて酷な話になる。
このように有機ELディスプレイでのSamsungの独占が、スマートフォン市場の競争原理に大きなひずみを生じさせている状況にある。
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