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» 2017年07月05日 09時30分 公開

Infineonが5000ユーロを寄付した団体とは知的障害がある人をスポーツで支援(2/3 ページ)

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

「チャンスをもらえないことは、一番不幸なこと」

 2時間28分である。有森さんの自己ベストと、ほとんど同じタイムだ。

 実は筆者は、3時間くらいかな? と予想していた。何の根拠もなく「そんなに速くは走れないのではないか」と思い込んでしまっていたのだ。これこそがまさに、「知的障害に対して持っている固定観念」だった。

 有森さんは、「知的障害のない大多数の人たちは、さまざまなことに挑戦し、いろいろな人に出会って、進みたい道を選び、自分の才能や可能性を見いだして生きることができる。でも、知的障害がある人たちは、そういうチャンスをもらっていない。チャンスをもらえないということが、一番の不幸」と続ける。

 スペシャルオリンピックスの最も大切な使命の1つは、スポーツを通して、知的障害がある人たちに「自分の可能性を引き出すチャンス」を提供することだ。

「チャンスをもらえないことは、一番不幸なこと」と話す有森裕子さん

 「チャンスを作る」という意味では、もちろん、スポーツでなくても構わない。絵でも音楽でも、何でもいい。ただ、スポーツはとても適した手段だと有森さんは語る。「スポーツは、応援される喜び、応援する楽しさを分かりやすく感じることができる。互いに応援し合って、ドキドキ、ワクワクしながら強く感情を揺さぶられるような経験。それが、自分が生きる価値を見いだしたり、自分が持っているものを発見したりすることにつながる。そういう経験をするのとしないのとでは、人生が大きく変わる」(有森さん)

 実は、有森さんは両足とも先天性股関節脱臼で生まれてきた。身体的には走ることに向いているわけではなかったにもかかわらず、五輪でメダルを2度も獲得するほどの偉業を成し遂げたのだ。

 有森さんは、多くの人に助けられ、さまざまな経験をさせてもらうことで、マラソンに自分の生きる道を見いだすことができたと語る。「そういう機会がなければ、足を動かしにくいという理由だけで、じっとおとなしく座っているような生き方しかできなかったかもしれない。人間は、チャンスさえあればどうにかできる」(有森さん)

 知的障害のある人はそれぞれに才能を持っているし、きちんと教えれば、周りが思っているよりもずっと多くのことができると、有森さんは言う。誰もがそれを理解して、特別な機会や場所がなくても、知的障害のある人がいろいろな事に挑戦できる環境になるならば、本当はそれが一番いい。だが、少なくとも現時点では、そうではない。有森さんは、「知的障害がある人たちにとっても、チャンスがすぐそこにある。そんな時代が来るまでは、スペシャルオリンピックスのような団体や活動が必要だし、大切なのだと思う」と結んだ。

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