それでは、分極はどのようにして起こるのだろうか。誘電体内部で分極(誘電分極)が生じるメカニズムは大きく、3つに分かれる。「電子分極(electronic polarization)」「イオン分極(ionic polarization)」、そして「配向分極(orientation polarization)」である。
電子分極は最も微小な分極で、原子内部で起こる。通常、原子核(正電荷)は電子殻(負電荷)の中心に位置しており、両者の電荷が完全に中和するので、外部から見ると分極は生じていない。しかし外部から電界を加えると、原子核(正電荷)と電子殻(負電荷)は反対の方向に動こうとする。実際には原子核が電子殻に比べてはるかに重いので、電子殻だけが位置をずらす。すると電子殻(電子雲)の中心位置が原子核の位置からずれ、分極が生じる。なおこのような正と負の電荷対を「電気双極子(electric dipole)」と呼ぶ。
イオン分極は、正のイオンと負のイオンで構成されるイオン結晶で起こる。通常、イオン結晶の正イオンと負イオンは中和しており、全体として電荷は帯びていない。外部電界を加えると、正イオンと負イオンが反対の方向にわずかに位置をずらす。このことで電荷の分布に偏りが起こり、分極が生じる。
配向分極は、上記の2つの分極とは少し異なる。誘電体中に、微小で膨大な数の電気双極子が存在している状態をはじめに考える。電気双極子の方向はランダムなので、全体としては電荷が中和されている。電荷を帯びていない。ここで外部電界を加えると、電気双極子の方向が外部電界を打ち消す方向にそろう。この結果、分極が発生する。
(次回に続く)
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