市場調査会社のIHS マークイットは2017年7月10日、5G(第5世代移動通信)の最新動向を解説する記者説明会を開催した。5Gのバリューチェーンでは今後ますますプラットフォーム化が進み、力のある企業が“総取り”するリスクがあるという。【訂正】
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5G(第5世代移動通通信)の規格化が進み、当初の予定であった2020年よりも前倒しで実用化される可能性が濃厚になってきた。米国のVerizonや韓国のKTは、それぞれ「Verizon 5G」や「ピョンチャン5G」という独自の5G規格を策定して実証実験を行っている。日本も、2020年の東京五輪開催での実用化に向けて、開発と実験が急ピッチで進んでいる。
これまでは、日本、米国、韓国で5Gの動きが目立っていたが、注目したいのは中国の動きだ。IHS Markit Technology日本調査部 部長を務める南川明氏は、「中国が急速に5Gに舵を切り始めた」と強調する。
中国は2020年までに5兆円を5Gのインフラ整備に投資する計画だ。「中国は、2050年までに達成する大きな目標として、世界一の経済大国、世界一の軍事大国になることを掲げている。5Gへの投資をはじめ、2030年までにIoTを活用したスマートシティーを実現しようとしている」(南川氏)
ただ、中国が5Gに巨額の投資を行う理由は、上記のような政策を掲げたからだけではない。もっと切実な事情もある。それが、電子機器の製造だ。IHS Markit Technologyの資料によれば、2006年ごろは、中国で製造される電子機器は、世界全体の4分の1(25%)だったが、2015年にはその割合が42%にまで拡大した。ところが、それ以降はほとんど拡大せずに横ばいとなっている。中国の人件費が、過去10年間で4倍以上に跳ね上がったからだ。加えて、欧米では自国の工場で生産を再開する製造業回帰や、より安い人件費を求めて東南アジアに工場を移すといった動きもある。「(5Gインフラを整備して)IoTを活用して省力化を図らなければ、電子機器の生産において競争力を維持できなくなるという懸念を、中国は持っている」(南川氏)
南川氏は、中国の「第13次5カ年計画」や「第14次5カ年計画」および製造業発展政策「中国製造2025」を例に出し、「中国は、5Gだけでなく科学技術や製造業の発展について、長期的な視野に立って政策を立てている。中国はIoT大国を目指している」と強調した。
さらに、「中国は5Gへの投資の考え方が違う。製造業をとにかく変えなくてはという意識が強い」と続け、中国の5Gに対する積極性が並々ならぬものであることを示唆した。
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