IoT市場の成長は、着実に進んではいるが予測よりも遅いようだ。課題の1つはモジュールなどのコストだと、市場調査会社は述べる。
IoT(モノのインターネット)の普及は予想されていたスピードでは進んでいないが、部品の統合とネットワークの低消費電力化の結果、着実に成長している。台湾のAndes TechnologyがIoTゲートウェイなどの用途に向けて発表した4つの新コアなど、新しいIoTチップがIoTの普及を促進すると期待される。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupの主席アナリストであるMike Demler氏は、同社が開催した「Linley IoT Hardware Conference 2017」(2017年7月25〜26日、米国カリフォルニア州)で、「IoT市場の出荷数は、2019年までは年間10億個に達しないだろう。だがその後、コストの削減と使いやすさの向上によって、消費者市場で産業分野を凌ぐ勢いで普及が進み、2023年にはIoT市場全体の出荷数は23億個に拡大すると予想される」と述べた。
Demler氏は、「予想よりも成長が遅れているのは、コストの高さと、チップの統合や相互運用規格の策定が進んでいないことが原因だ」と指摘する。だが、こうした点は今後2年間で改善されると予想されることから、「IoTデバイスの出荷数はすぐに倍増する見通しだ」(同氏)という。
産業向けIoT(IIoT)は現在、IoT市場の57%を占めていて、2017年末にはIoTデバイスの導入数は約16億個に達する見通しだという。しかし2023年には、消費者市場がIoT市場の72%を占め、デバイス数は103億個に上ると予想される。このうち、スマートホームに70億個のIoTデバイスが採用されると推定されるという。
同氏は、「モノを無線ネットワークに接続する技術は難しく、高い信頼性を確保する必要もある。このことが、IoTの成長を阻んでいる」と指摘している。
スマートビルディングは、消費者向けIoT市場第2位の分野で、推計25億個のデバイスが導入されている。スマートビルディングに続く分野はコネクテッドカーとスマートファームで、それぞれのデバイス数は約10億個である。ウェアラブルデバイスとスマートファクトリーは、それぞれ約3億個と1億5000万個と推定される。
LTE Cat-MやLoRa、SIGFOXなどLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの登場によって、センサーノードの普及が進んでいる。AT&TやVerizonなどの通信事業者は、ソフトウェアをアップグレードしてLTE Cat-Mに対応することで、20dBmの低伝送レベルで800kビット/秒のデータ伝送を実現した。
T-Mobileは、NB(Narrow Band)-IoTをサポートすることを発表した。ただし、DSPコアIP(Intellectual Property)ベンダーのCEVAによると、ほとんどの通信事業者は、3GPPのリリース13のNB-IoTを試用するが、リリース14の展開を待つと予想されるという。リリース14は、伝送電力レベルを14dBmに下げ、低電力とレイテンシの短縮、より優れた位置特定、マルチキャスティングを実現する。
LTE UE カテゴリ |
リリース | 下り速度 FD/HD |
帯域幅 | 伝送パワー (dBm) |
モジュール価格 (米ドル) |
標準化 | 実用化 (予定含む) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Cat-1 | 8 | 10Mbps | 20MHz | 23 | 30 | 完了 | 商用化済み |
Cat-M1 (eMTC) |
13 | 800kbps/ 300kbps |
1.4MHz | 20/23 | 10 | 2016年Q1 | 2017年Q2 |
FeMTC | 14 | 4Mbps | 5MHz | 20/23 | 15 | 2018年2Q | 2019年Q1 |
NB-IoT | 13 | 40kbps | 180kHz | 20/23 | 5 | 完了 | 2017年Q1 |
eNB-IoT | 14 | 80kbps | 180kHz | 14/20/23 | 4 | 2017年Q3 | 2018年Q1 |
EC-GSM | 13 | 10kbps | 200kHz | 23/33 | 4以下 | 完了 | 2017年Q1 |
CEVAが提供した情報を基に、EE Times Japanが作成 |
NB-IoTのモジュールの量産価格は、2019年には4米ドルを切るとみられている。これに加えて、RFやアナログ関連の部品や、センサーフュージョンを担うSoC(System on Chip)の価格が約2米ドルになると、CEVAは見積もっている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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