5Gの規格を策定中の3GPPには、各社から提案の論文が殺到しているようだ。3GPPは、提出される論文の数を制限せざるを得ない状況になっている。
5G(第5世代移動通信)は、前進のペースを加速させている。ただ、現時点で問題になっているのは、一部の企業が、自らの進展の状況を、5G規格の策定を手掛ける3GPPグループへの貢献回数で評価するようになったという点だ。このような慣行は手に負えない状況になっていて、一部のエンジニアたちが、1つの提案事項を複数の論文に分割しているケースもあるという。このため、ワークグループは、1件の議題項目につき、1社当たりの論文数を1本のみに制限せざるを得なくなっている。
Qualcommで3GPPワーク関連の技術規格担当バイスプレジデントを務めるLorenzo Casaccia氏は、「特定の企業が、システムを操作しようとしている」と述べる。
同氏はインタビューの中で、「議長が、どの企業も貢献の件数を細かく分けてくることにうんざりしたため、最も重要な2つのワークグループがここ数カ月間にわたり、エンジニアが提出することができる提案の件数に上限を設定してきた」と述べている。
Qualcommは、3GPPに対する技術的貢献をめぐり影響を受けてきた、十数社の企業の中の1社だ。Casaccia氏のグループは、定期的に3GPPのミーティングに参加する80人のスタッフと、研究所の設計やシミュレーションなどをサポートする数百人のスタッフとで構成されているという。
Qualcommは、Casaccia氏のグループを、3GPPへの貢献件数ではなく、もっと野心的な目標に基づいた評価を行っている。例えば、3GPPは2017年3月、5Gの標準化スケジュールを大幅に前倒しすることを発表したが、これにはCasaccia氏のグループも貢献しているという。また、免許不要帯域でLTEを使用できるように3GPPを説得することにも成功したという。
同氏は、「われわれは決して、貢献の件数だけを評価するようなことはしない。目標を達成するために必要なツールの1つにすぎないからだ。もう1つ別のツールとしては、アライアンスの確立が挙げられる」と述べている。
通信事業者は2019年に、当初の目標よりも1年早く、より高性能なモバイルブロードバンドサービスを導入できるようになる見込みだ。現在、一部のLTEに使われているCA(キャリアアグリゲーション)技術を採用することにより、4Gおよび5G帯域を使う個々のサービスを組み合わせることも可能だという。
5GのNSA仕様は、2017年後半に完成し、2018年中には通信事業者のトライアルや相互運用性試験が行われる予定だ。SA(スタンドアロン)の5Gサービスに必要な完全な仕様は、2018年末には完成するとみられる。
Casaccia氏は、「どの企業も5Gで後れを取らないよう、研究所やフィールドテストにおいて6GHz未満の帯域やミリ波帯のシステム向けにプロトタイプを開発するなど、必死に取り組みを進めている」と述べた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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