新しいBluetoothネットワークとして、メッシュネットワークトポロジーを採用した「Bluetooth mesh」が登場した。主にFA(ファクトリーオートメーション)やBA(ビルディングオートメーション)などの産業用途向けで、数千に上るノードをサポートできるようになる。
Bluetooth Special Interest Group(以下、Bluetooth SIG)は2017年7月18日(米国時間)、メッシュネットワークをサポートする「Bluetooth mesh」を発表した。数千にも上るデバイス間の相互接続が可能になる。1つ1つのデバイスの通信距離は従来のBluetoothと変わらないが、多数のデバイスを相互接続することで、極めて広範なエリアをカバーできることになる。
Bluetoothは、2台のデバイスをペアリングして通信する、いわゆるポイント・ツー・ポイントのネットワークトポロジーを採用している。シンプル故に接続性とセキュリティに優れ、多くの民生機器に搭載されてきた。それとは対照的に、Bluetooth meshは、より産業用途を意識して開発されたものだ。Bluetooth SIGのマーケティング担当副社長を務めるKen Kolderup氏は、EE Times Japanが行ったインタビューで、産業用途でもBluetoothを使用したいとのニーズが以前からあったと語った。
数十から数百、数千に上るノードをサポートするBluetooth meshの主な用途は、ビルディングオートメーション(BA)やファクトリーオートメーション(FA)、センサーネットワークだ。「特にBAは、Bluetooth meshの最初の主要なユースケースになる」と、Kolderup氏は述べる。「既に、Bluetooth meshを使って1000個以上の照明を制御するBAシステムを実証実験的に構築しているBluetoothのメンバー企業もいる」(同氏)
Bluetooth meshの利点は、大きく3つある。信頼性、拡張性、セキュリティだ。信頼性では、ピア・ツー・ピアの通信でルーターやハブを経由しないことに加え、1つのデバイスに不具合がある場合は別の経路を通って通信するので、高い信頼性と冗長性を確保できる。拡張性では、前述した通り数千に上るノードをサポートする。Kolerup氏は、「この拡張性がBluetooth meshの大きな特長だ。現時点で、IEEE 802.15.4をベースにした他のメッシュネットワーク規格がサポートできるノード数は、最大でも数百だ。それに比べてBluetooth meshは、規格上は3万2000ノードまでサポートできる。ただ、これだけのノードを使うシステムが市場に登場するには、まだ時間がかかるだろう」と説明した。セキュリティでも、これまでBluetoothで使われてきたAES(Advanced Encryption Standard)を採用し、「メッシュネットワークを経由する全てのメッセージは暗号化される。産業用途で要求されるセキュリティアーキテクチャを実現している」(Kolderup氏)とする。
Bluetooth meshは、Bluetooth 4.0以降のコア仕様と互換性があり、Bluetooth Low Energy(BLE)上で動作する。「コア仕様であるBluetooth 5.0では、対応するチップセットの開発に時間がかかるため、Bluetooth 5.0対応機器が市場に出るまでには時間が必要だ。だがBluetooth meshはネットワーク層の規格であり、さらに、仕様の開発中に、複数のベンダーの相互運用性テストも実施済みだ。そのため、機器の開発は速く進むだろう。2017年には、Bluetooth mesh対応機器がBAやFA市場に投入される見込みだ」(Kolderup氏)
なお、Qualcommは2017年7月18日(米国時間)、同社のSoC(System on Chip)「QCA4020」「QCA4024」がBluetooth meshをサポートすると発表した。これらのSoCは現在、エンジニアリングサンプルを出荷中で、2017年9月に出荷を開始する予定だ。
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