今回から2回にわたり、強誘電体の二酸化ハフニウムが、不揮発性メモリ用のキャパシターとしてどのような特性を示しているかを解説する。強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)のメモリセルで重要なのは、強誘電体キャパシターの特性だ。二酸化ハフニウムを絶縁膜とする強誘電体キャパシターが、優れた特性を備えているかどうかを調べる必要がある。
前回は、強誘電体の新材料である二酸化ハフニウム(HfO2)系化合物が強誘電体となる条件と、結晶構造との関係について解説した。今回(前編)と次回(後編)は、強誘電体の二酸化ハフニウムが不揮発性メモリ用のキャパシターとしてどのような特性を示しているかをご報告する。
始めに、メモリセルの構造について復習しておこう。DRAMのメモリセルは、1個のセル選択トランジスタと1個の高誘電体キャパシターで構成されている。これに対して強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)のメモリセルは従来、2通りの構造が考えられてきた。
1つは、DRAMと類似の構造である。1個のセル選択トランジスタと、1個の強誘電体キャパシターでメモリセルを構成する。いわゆる「1T1C方式」(Tはトランジスタの略号、Cはキャパシターの略号)である。
もう1つは、フラッシュメモリ(電荷捕獲方式のフラッシュメモリ)と類似の構造である。1個のトランジスタのゲート絶縁膜に、高誘電体膜と強誘電体膜の両方を重ねた構造を導入する。2層構造の絶縁膜は、シリコン側が高誘電体、ゲート電極側が強誘電体である。こうすると、1個のトランジスタがセル選択素子と記憶素子を兼ねるようになる。「FeFET(Ferroelectric FET)」セルと呼ばれている。
強誘電体不揮発性メモリの高密度化に有利なのは、1T1C方式よりも、FeFET方式である。当然だろう。ただし、半導体メモリに使えるようなFeFETを製造することは、極めて難しい、とされてきた。従来型の強誘電体であるペロブスカイト系材料を使って、FeFET方式のメモリセルは過去に長い間にわたって研究されてきた。しかし、製品化に至った例は見当たらない。
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