強誘電体の二酸化ハフニウムは、不揮発性メモリ用のキャパシターとしてどのような特性を示しているのか。後編となる今回は、分極反転サイクル特性と、シリコン面積当たりの静電容量を高めるための3次元構造について解説する。
前回(前編)と今回(後編)では、強誘電体の二酸化ハフニウム(HfO2)が不揮発性メモリ用のキャパシターとしてどのような特性を示しているかをご報告している。
不揮発性メモリの長期信頼性を代表する性能が、書き換えサイクル寿命(endurance)である。強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)の場合は、強誘電体キャパシターにおける分極反転のサイクル寿命が、メモリセルの寿命とみなせる。
研究室レベルで試作した二酸化ハフニウム強誘電体キャパシターの分極反転サイクル寿命は、かなり良好な値を得ている。10の9乗サイクルまで確認したデータがある。分極反転に必要な電圧は0.7Vとかなり低く、半導体デバイスとの相性は悪くない。最近の最先端デバイスは電源電圧が1.0V近くにまで下がっており、分極反転に必要な電圧は低いことが望ましいからだ。
フラッシュメモリのようにストレージに応用する場合は、10の9乗サイクルという値は非常に良好だといえる。しかし、DRAMのようなメモリに応用する場合は、10の9乗サイクルでは足りない。メモリでは、10の15乗サイクルという極めて厳しい値を達成する必要がある。
強誘電体の二酸化ハフニウムを使ったキャパシターの分極反転サイクル特性は、おおよそ3つの段階を経て変化していく。最初は「初期状態(pristine)」である。この段階では、分極反転の残留分極が最大には達していない。
ここから交流の電圧パルスを与えて分極反転を繰り返していくと、キャパシターの強誘電体内部にある酸素空孔が動き、特性が良くなる。具体的には、残留分極の電荷量が増加する。この段階を「ウエイクアップ(wake-up)」と呼ぶ。
そしてあるところから、残留分極の電荷量が減り始める。これが「疲労(fatigue)」である。疲労が始まると、残留分極が減るとともに、キャパシターのリーク電流が増加する。そして最後は、絶縁破壊へと至る。
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