究極の高密度不揮発性メモリを狙う強誘電体トランジスタ:福田昭のストレージ通信(73) 強誘電体メモリの再発見(17)(2/2 ページ)
「FeFET(Ferroelectric FET)」あるいは「強誘電体トランジスタ」の基本的な構造は、かなりシンプルである。シリコン基板(シリコンウエハー)の表面には、常誘電体の薄いゲート絶縁膜が載る。その上に、強誘電体の絶縁膜が載り、最上層はゲート電極となる。普通のMOSFETとの違いは、ゲート絶縁膜が2層構造になっただけ、ともいえる。
ただしトランジスタの設計はかなり複雑だ。普通のMOSFETはスイッチあるいはアンプであり、メモリではない。しかし強誘電体トランジスタはメモリなので、スイッチング特性とメモリ特性の両方が関連する。ゲート電圧、ドレイン電流、ゲートスタックの静電容量、常誘電体膜中の電界、強誘電体膜中の電界、強誘電体のスイッチング特性(分極反転特性)、強誘電体の膜厚と抗電界などを考慮しなければならない。
例えばメモリウィンドウ(オン状態とオフ状態の差分)は、強誘電体の膜厚と抗電界の大きさに比例する。また書き込みの速度は、スイッチング特性(分極特性)に依存する。
強誘電体トランジスタ(FeFET)の基本的な構造とパラメータ群。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)
強誘電体トランジスタ(FeFET)の研究は、従来の強誘電体材料であるペロブスカイト系セラミックスと、強誘電性の有機高分子を使い、1990年代後半から活発になってきた。次回は、その歩みをご報告しよう。
(次回に続く)
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