電圧印加によってイオン輸送が生じる場合は、陽イオンと陰イオンが行方向に輸送される。ところが、磁気力でイオン輸送が生じる場合には、磁性イオンが局所的に形成する電界によって、逆符号の非磁性イオンも磁性イオンと同じ方向に輸送される。このため、純粋な磁性イオンでは濃度差が生じにくく、水を含んだほうが濃度差による起電力を観測できるという。
作製した電気二重層トランジスタは、水素終端ダイヤモンドと磁性イオン液体を組み合わせている。トランジスタに印加する磁場を電磁石で制御すると、水素終端ダイヤモンド表面を通過するドレイン電流が変化することが分かった。これは水素終端表面近傍に存在する二次元ホールガスの濃度が、電気二重層の変調に伴って変化したものだという。これらのことから、磁場を印加することで電気二重層トランジスタの駆動が可能になることが分かった。
磁場は遠隔から印加できるため、これまでのトランジスタのようにゲート電極を設ける必要がなくなり、デバイスの設計、製造が比較的容易となる。ただ、ドレイン電流の変化は極めて小さく、トランジスタの高性能化向けては改良が必要になるという。
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