シャープは2017年9月、波長515nmの緑色半導体レーザー製品のサンプル出荷を同年10月20日から開始すると発表した。これによりシャープは、光の三原色(赤色、青色、緑色)をカバーする半導体レーザー製品群を構築。「三原色を扱うことで多くのメリットをユーザーに提供できる」(同社)という。
三原色をそろえたことに意味がある。
シャープは2017年9月、波長515nmの緑色半導体レーザー製品のサンプル出荷を同年10月20日から開始すると発表した。これにより既に発売済みの赤色、青色半導体レーザー製品と合わせて、光の三原色をカバーする半導体レーザー製品ラインアップが整うことになる。シャープでは「1社で三原色全てのの半導体レーザー製品を扱うのは、当社が初めて」とする。
シャープは1960年から半導体レーザーの開発着手。1982年には世界初のCD用半導体レーザー量産化に成功するなど、主に記録ドライブ向けに半導体レーザー事業を展開してきた。そして2013年には、赤色半導体レーザーを製品化し、プロジェクターなどディスプレイ用途向けの可視光半導体レーザー市場に参入。2016年に青色半導体レーザーを製品化し、今回、緑色半導体レーザーの製品化に至った。
競合他社に先駆け、三原色の半導体レーザー製品ラインアップを実現できた理由としてシャープ電子デバイス事業本部レーザー事業部企画部長の田中智毅氏は「三原色を実現するには、ガリウムヒ素(GaAs)系の基板材料と、窒化ガリウム(GaN)系の基板材料の両方を扱う必要があり、シャープには双方の製造技術などのノウハウがあったから」と説明する。一般に、三原色の中で最も光の波長が長い赤色は、GaAs系基板材料を用い、短波長の緑色、青色にはGaN系基板材料を用いる。シャープはDVDドライブ向けの赤外(波長650nm)半導体レーザーでGaAs系基板材料を、Blu-rayディスクドライブ向けの紫色(波長405nm)レーザーでGaN系基板材料を扱ってきたため、三原色のラインアップを実現できたというわけだ。
「特に赤外や赤色に用いるGaAs系の領域に参入するには、相応の量産規模を立ち上げる必要があり障壁が高い。そのため、三原色を全てそろえられるメーカーが他にないのではないだろうか」(田中氏)と分析する。
2017年10月20日からのサンプル出荷、同年11月中旬からの量産を予定する緑色(波長515nm)半導体レーザー製品は、光出力30mWで、動作電流150mA(典型値)、動作電圧6.3V(同)。直径5.6mm、直径3.8mmと2タイプのTO-CANパッケージ品を販売する。
田中氏は「正直、今回発売する製品のスペックは、“業界最高”などをうたうほどの特長はない」と言い切ってしまう。そして、「われわれ(=シャープ電子デバイス事業本部)の地元・広島を本拠とした毛利元就の逸話である“三矢(さんし)の教え”と同じように、3つをそろえることで強さを発揮すると考えている。三原色をそろえたことに意味がある」と語る。
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