二酸化ハフニウムは、条件次第で「反強誘電体(Antiferroelectrics)」になるが、反強誘電体の薄膜にある工夫を加えると、不揮発性メモリに応用可能になる。その「工夫」とは何だろうか。
前回から、反強誘電体材料を使った不揮発性メモリ技術の解説シリーズを開始した。取り上げる反強誘電体材料は、二酸化ハフニウム系材料が強誘電体となることを発見する過程で見つかったもので、2010年代に報告されたもの。非常に新しい材料だといえる。
そして前回の後半では、強誘電体の分極特性と、反強誘電体の分極特性の違いを説明した。反強誘電体は、残留分極を持たないか、あったとしてもごくわずかにすぎない。従って、当然のことだが、そのままでは不揮発性メモリとはならない。
ところが、二酸化ハフニウム系強誘電体を発見したFraunhofer Instituteを中心とするグループは、反強誘電体の薄膜にある工夫を加えると、不揮発性メモリに応用可能になることを発見した。以下にその手法を説明しよう。
前回の後半に示した、反強誘電体の分極特性曲線のグラフ(ヒステリシス曲線)から出発する。横軸は電界であり、横軸の中央はゼロ、左はマイナス、右はプラス(互いに反平行の方向)を意味する。縦軸は左の軸が電流、右の軸が分極電荷量である。当然ながら、電界がゼロのときに分極電荷量はほぼゼロとなる。
ここで、反強誘電体の内部に電界バイアスを与えることで、分極特性曲線のゼロ電界(外部電界がゼロという意味)を、例えば左に(マイナス方向に)シフトさせることを考える。具体的には、反強誘電体薄膜キャパシターのトップ電極(上層電極)とボトム(下層電極)に、仕事関数の異なる金属材料を採用する。仕事関数の違いによってエネルギーポテンシャルに傾斜、すなわち電界が生じる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.