物質・材料研究機構(NIMS)は早稲田大学や多摩美術大学と共同で、グラデーション変化する調光ガラスを開発した。「遮光」と「眺望」を両立できる窓を実現することができる。
物質・材料研究機構(NIMS)は2017年10月、早稲田大学や多摩美術大学と共同で、グラデーション変化する調光ガラスを開発したと発表した。調光範囲を自由に変更することができ、車やビルの窓ガラスに応用することで、「遮光」と「眺望」を両立することが可能となる。
開発した調光ガラスは、色変化の応答性に優れた有機/金属ハイブリッドポリマーをエレクトロクロミック(EC)材料として用いた。これにより、電圧(3V)の印加時間を制御するだけで、遮光部分と透明部分の割合を変えることができるという。
グラデーション変化している途中で電源を切ると、その状態が保持される。電流を流す方向を変えることで、遮光方向を変更することもできる。試作した調光ガラスは外形寸法が20×20cmで、電圧を印加すると電池を接続した側面から反対方向へと色が変化していくため、使用状況に最適な遮光状態を実現することができるという。
今回採用した有機/金属ハイブリッドポリマー膜は、印加電圧1.2Vで膜面積が1.0×1.5cmの場合、遮光化に必要な時間が0.31秒、透明化に要する時間は0.58秒と極めて速い。透明化と遮光化の繰り返し耐久性は10万回を上回るという。
開発した調光ガラスの構造は、EC材料と固体電解質を2枚の透明電極付きガラスで挟んでいる。特に今回は、採用したポリマーの高速応答性を生かすために、電極設計を工夫した。細かく区分けされた透明電極を作製し、これを極めて細い透明電極で接続した。この接続部分は配線抵抗が大きくなるため、電流を流す方向に沿って電極の抵抗値が階段状に増加し、EC材料が色変化する速度が遅くなるという。
試作した調光ガラス(サイズは20×20cm)による実験では、電極間に3Vを印加すると、約80秒でガラス全体が遮光状態から透明状態にグラデーション変化することが分かった。電池のプラス極とマイナス極を入れ替えると、約40秒で透明状態から遮光状態に戻ることを確認した。
研究グループは今後、耐熱性や耐光性といった特性改善、色むら修正などの研究を進め、より高度な機能性と信頼性を備えた調光ガラスを開発していく計画である。
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