QualcommによるNXP Semiconductorsの買収は、当初は2017年内に完了する予定だったが、2018年初頭にずれ込む可能性が高くなった。中国と欧州の規制当局による審査が長引いているからだ。
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NXP Semiconductors(以下、NXP)のCEOであるRichard Clemmer氏は、2017年第3四半期の業績発表の会場において、QualcommがNXPを380億米ドルで買収する計画が、予定していた2017年中には完了できない見込みであることを認め、これまでの主張を修正する形となった。
同氏によると、買収計画は2018年初頭にずれ込む予定だという。
NXPは今回、Qualcommとの合併に向けた道のりを進む前から山積みになっていた課題の存在を、初めて公に認めたことになる。両社が2016年に合併買収を発表して以来、欧州と中国の規制当局は両社に対し、特許などの資産を売却するか、またはそれに相当する具体的な対策を規制当局と交渉するよう、強い圧力をかけてきた。
Clemmer氏はこの1年間、「保留状態の買収計画に対するさまざまなたくらみによって、買収手続きの完了が遅れるようなことはない」と主張し、決してその意見を曲げようとはしなかった。
しかし、同氏は2017年10月26日に、「当社はQualcommとともに、各規制当局との間で、2017年中に買収手続きを完了できるよう、熱心に取り組みを進めてきた。しかし現在のところ、スケジュールとしては非常に厳しいため、手続きを完了できるのは2018年初頭になりそうだ」と述べ、これまでの主張を撤回した。
今回の買収計画において、最も差し迫った脅威の1つであり、完了予定を遅らせることになった明らかな要因とされるのが、EC(欧州委員会)による調査だ。ECはこれまで、QualcommおよびNXPのライバル企業各社から提起された懸念事項について、調査を行ってきた。例えば、この買収によって、半導体業界において製品価格が上昇したり、イノベーションが減少するなどの懸念が挙げられている。
Reuters(ロイター通信)は2017年9月に、「ECの独占禁止法当局は、QualcommによるNXPの買収計画に関する調査について、より多くの情報が必要だとして、2回目となる中止を発表した」と報じている。
さらに、ロイター通信は2017年10月初めに、別の記事の中で、「Qualcommは、EC独占禁止法当局の承認を得られるよう、NXPの一部の特許の取得を断念しようとしている」と報じた。これによると、Qualcommは規制当局に対し、NXPの標準必須特許(SEP:Standard Essential Patent)を取得しない予定であると主張したという。NXPはこのSEPを、別の企業に売却することができるためだ。しかし、NXPが保有する特許のうち、どのSEPをQualcommが諦めるつもりなのかは、まだ明らかになっていない。
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