東北大学大学院工学研究科の研究グループは、層状半導体GaSe(ガリウムセレン)が従来のGaAs(ガリウムヒ素)に比べて10倍を超えるスピン軌道相互作用を示すことを発見した。
東北大学大学院工学研究科の研究グループは2017年11月、層状半導体GaSe(ガリウムセレン)が従来のGaAs(ガリウムヒ素)に比べて10倍を超えるスピン軌道相互作用を示すことを発見したと発表した。
GaSeなどのIII-VI族層状物質半導体は、移動度が比較的高いことから、原子層トランジスタの実現に向けた研究が行われている。また、直接遷移型半導体の特性を生かして、薄膜フォトディテクターや非線形光学効果を用いた温室テラヘルツ波発生源としての研究も進められている。圧力印加によるトポロジカル絶縁体転移や電界制御による強磁性転移なども論理的に予言されている。ところが、GaSeのスピン軌道相互作用の起源についてはこれまで、実験的に解明されていなかったという。
今回、東北大学大学院工学研究科の高砂祥一博士前期課程学生(現在はエプソン)や好田誠准教授、塩貝純一助教(現在は同大金属材料研究所)、新田淳作教授らによる研究グループは、同大大学院工学研究科の小山裕教授を中心とする研究グループから提供されたGaSeを用いて、スピン軌道相互作用を検証した。
GaSeの膜厚が10nmのトランジスタを用い、低温(2K)における磁気量子伝導度を測定した。弱反局在理論との比較により、スピン軌道相互作用を評価したところ、GaSeはGaAsに比べて10倍を超える強さのスピン軌道相互作用が得られることが分かった。また、バックゲート電圧依存性から、ラッシュバ型のスピン軌道相互作用であることを確認した。
なお、原子層GaSeは、ゲート電圧によって磁性体に転移することが理論的に予言されている。このため、強磁性体電極を用いることなくGaSeだけで電界効果スピントランジスタを構成することが可能だという。
今回の研究成果は、2017年10月30日に米国科学誌「Physical Review B, Rapid Communication」にオンラインで公開された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.