東北大学の蟹江澄志准教授らは、硫化カドニウム(CdS)量子ドットとデンドロンからなる「有機無機ハイブリッドデンドリマー」を開発した。このデンドロン修飾CdS量子ドットは、非対称性の高い液晶性立方晶構造を形成している。量子ドットの発光強度を自在に制御できることも分かった。
東北大学多元物質科学研究所の蟹江澄志准教授らによる研究グループは2017年6月、硫化カドニウム(CdS)量子ドットとデンドロンからなる「有機無機ハイブリッドデンドリマー」を開発した。このデンドロン修飾CdS量子ドットは、非対称性の高い液晶性立方晶構造を形成していることが分かった。量子ドットの発光強度を自在に制御できることも明らかにした。
今回の研究は、蟹江氏や多元物質科学研究所の松原正樹博士(現在は仙台高等専門学校助教)、村松淳司教授、英国シェフィールド大学のGoran Ungar教授らと、東北大学多元物質科学研究所の秩父重英教授グループおよび、九州大学先導物質化学研究所の玉田薫教授グループらが連携して行った。
蟹江氏らの研究グループは、カルボキシル基(CO2H)を有するCdS量子ドット表面に、温度変化によって液晶状態となるデンドロンを密に装飾した有機無機ハイブリッドデンドリマーを開発した。
Ungar教授らと連携して、開発したデンドロン修飾CdS量子ドットの構造を、小角X線散乱測定法により詳細に解析した。その結果、デンドロン修飾CdS量子ドットは、液晶性P213構造と呼ばれる非対称性の高い、自己組織性立方体構造を形成していることが分かった。P213構造とは、中心対称のない特殊な構造である。
さらに研究グループは、P213構造を形成したCdS量子ドットについて、発光強度を自在に制御できることを初めて見出し、その機構も解明したという。外部から紫外光を照射することで、CdS量子ドットの内部に生じた光励起エネルギーが、ほぼ全てCdS量子ドットの外側に存在するデンドリマーにエネルギー遷移する。これによって、CdS量子ドットの発光強度を制御することが可能になったという。
研究成果について研究グループは、「光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽電池や、電気エネルギーを直接光に変換するLEDの高性能化に有用な技術である。生鮮食品の熱履歴センサーなどの開発にもつながる技術」とみている。
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