AppleやSamsung Electronicsなど、大手メーカーの製品に、中国メーカーのシリアルフラッシュメモリやARMマイコンが搭載され始めている。こうした傾向から、中国メーカーが開拓しつつある、マイコン市場への新たなルートが見えてくる――。
年間300製品にも及ぶ製品を分解していると、常に目にするチップというものがある。メモリを搭載した製品が最も多く、Samsung Electornics、SK-Hynix、東芝、Micron Technologyのメモリは、ほとんどの大型製品では必ず目にする。1つのパッケージに128GB以上を搭載するNAND型フラッシュメモリや、プロセッサと同じパッケージに積層されたDDR3、DDR4などが多い。
スマートフォン、ドローン、ネットワーク機器(ゲートウェイやスマートスピーカー)、カーナビゲーションなどには上記が必ず搭載されている。大容量で高速という特徴があり、上記のような大手半導体メーカーの市場支配力は年々高まっているのは周知の通りだ。微細化による集積度の向上と積層化による容量の拡大が継続され、今やSSDやスマートフォンでは数百ギガバイトからテラバイトクラスの製品も数多く出回っている。
一方で、大容量を持たないメモリの消費も旺盛だ。IoT(モノのインターネット)のエッジ端末やトイドローン、通信機能付きガジェットなどの小さな記憶用半導体には、シリアルフラッシュメモリが数多く使われている。
多くの製品分解で最も目にするデバイスの1つがシリアルフラッシュメモリだ。キロバイトから数百メガバイトまでの幅広いラインアップが存在する。シリアル通信を使うので、速度は多少遅いものの、配線本数が少ない(8ピン仕様のものが多い)ことから、組み込み分野や、1つのパッケージに2つ以上のチップを入れるSIP(Silicon In Package)などで使われることが多い。
シリアルフラッシュメモリは歴史も長く、あらゆるシステムに上記のように使われることから、非常に多くのメーカーが製品ラインアップを拡充している。日米欧、台湾、韓国など半導体チップを設計、製造するほとんどの地域の、ほとんどのメーカーが製品を持っている。
フラッシュメモリは不揮発性、つまり電源OFFでもデータが保持される特性があるために、大容量から小容量まで幅広い品種が存在し、回路方式の差、トランジスタ構造の差、プロセス(製造)方式の差などで最適化やコスト調整を図りながら併存し続けている。
弊社は、FeRAM(強誘電体メモリ)やMRAM(磁気抵抗メモリ)なども常時入手して観察を続けている。
こうしたシリアルフラッシュメモリは過去には日米欧などのメーカーの製品が多く使われていたが、2000年代後半以降は台湾のメーカー製品の採用例が増えてきた。台湾のMXIC(Macronix International)、Etron Technology、Winbond Electronicsのチップは、多くの製品の不揮発メモリとして活用されている。
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