これまで7回にわたり「IEDM 2017」の概要と注目の技術講演を紹介してきた。今回はIEDM 2017レビュー編の最終回として、開催最終日である12月6日午後のセッションから注目講演を紹介する。
前回は、技術講演の最終日である12月6日(水曜日)の午前のセッションから、概要と注目講演をご報告した。今回は、同じ12月6日の午後のセッションから、概要と注目講演を紹介する。
この時間帯は、セッション35からセッション40までの6本の技術講演セッションが同時に進行する。テーマは、モデリングの手法とアプローチの進展(セッション35)、破壊的コンピューティング向けのデバイス技術(セッション36)、次世代のトランジスタ技術(セッション37)、スピン注入型磁気メモリ(セッション38)、最先端の信頼性キャラクタライゼ―ションと回路(セッション39)、IoT(Internet of Things)向けのMEMS(セッション40)、である。
注目の講演はまず、セッション36に登場する。新しいコンセプトのデバイスの発表である。
EPFLのNanoelectronic Device Laboratory(Nanolab)を中心とする研究グループは、n型化合物半導体とn型化合物半導体のヘテロ接合で、非整流作用と整流作用を切り替え可能な2端子素子を発表する(講演番号36.1)。n型半導体の材料は、二流化モリブデン(MoS2)と二酸化バナジウム(VO2)である。MoS2は2次元の層状化合物として知られており、VO2の間でファンデルワールス力によるヘテロ接合を形成する。そしてVO2は、半導体相と金属相の間を行き来可能な相転移材料として知られている。
VO2は室温では通常、半導体である。ここで高電流を流したり、あるいは温度を上げたり、高電圧を印加したりといった外部からの刺激をVO2に与えると、VO2は金属に相転移する。するとMoS2と金属VO2がショットキー障壁ダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)を形成する。発表講演では、電流注入によってヘテロ接合がSBDに変化することを示す。
さらに、MoS2とVO2のヘテロ接合を元にした電界効果トランジスタの試作結果を報告する。電源電圧が1.5Vの条件で、電流のオンオフ比は10の3乗以上、オフ電流は5pA/μm以下、サブスレッショルドスロープは130mV/桁といった性能数値を得た。
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