「ISSCC 2018」技術講演の初日(2018年2月12日)。午後のハイライトとして、ミリ波無線、イメージセンサー、超高速有線通信をテーマにした注目論文を紹介する。ミリ波無線では「IEEE 802.11ad」に準拠した送受信回路チップが登場。イメージセンサーでは、ソニーやパナソニックが研究成果を披露する。有線通信では、PAM-4によって100Gビット/秒の通信速度を実現できる回路が発表される。
2018年(来年)2月に米国サンフランシスコで開催予定の半導体回路技術に関する国際学会「ISSCC 2018」の概要をシリーズでお届けしている。前回に続き、今回は、メインイベントである技術講演セッションの初日(2月12日)午後から、ハイライトをご紹介しよう。
前回でご説明したように、初日は午後1時30分から、一般の技術講演セッションが始まる。セッション番号だと、セッション2からセッション6までの5本の講演セッションが同時並行に進む。セッション名は、プロセッサ(セッション2)、アナログ技術(セッション3)、5G(第5世代移動通信)以降の移動体通信に向けたミリ波無線(セッション4)、イメージセンサー(セッション5)、超高速有線通信(セッション6)、である。その中でセッション2とセッション3の注目講演は前回にご報告した。今回はセッション4〜セッション6の注目講演をご紹介しよう。
セッション4の「5G以降の移動体通信に向けたミリ波無線」では、60GHz帯を使う超高速無線LAN「IEEE 802.11ad」に準拠した送受信回路チップが登場する(関連記事:802.11adは本格普及へ、Qualcommがデモ)。
Broadcommは、「IEEE 802.11ad」の無線バックホール向け送受信回路チップを発表する(講演番号4.2)。ここで無線バックホールとは、アクセスポイント同士を無線で接続する方式のこと。従来は有線でアクセスポイント間を接続していた(有線バックホール)。無線バックホールを採用すると、有線LANの構築が困難な場所にも無線LANを設置できるようになる。ただしアクセスポイントの半導体チップに対する技術的な要求は高まる。
Broadcommが開発したチップは、114素子の位相アレイアンテナを備えたアクセスポイントに対応している。等価等方輻射電力(EIRP)は51dBm(126W)と高い。製造技術は28nmのCMOSである。
セッション4ではこの他Georgia Institute of Technologyが、マルチポートの自己干渉抑制(SIC:Self-Interference-Canceling)アンテナを内蔵する64GHz帯の全二重送受信回路チップを公表する(講演番号4.7)。60GHz〜75GHzでマルチポートアンテナの送受信アイソレーションは35dB以上。63GHz〜65GHzでの自己干渉抑制(SIC)は60dB以上である。
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