図1は、2016年に発売された「iPhone 7」に採用された「A10」プロセッサと、2017年に発売された「iPhone 8」および「iPhone X」に採用されている「A11 BIONIC」プロセッサについて、集積密度(1mm2当たりのトランジスタ数)を比較した結果である。トランジスタの数はAppleが公表したものを基にしている。なお、テカナリエではチップを開封し0.01mm単位での面積測長を行っている。16nmプロセスから10nmプロセスに移行することで、実に1.85倍もの集積密度を実現できている。同じ面積のチップなら、おおむね2倍近い機能・回路を搭載できることになるわけだ。10nmプロセスに移行した効果は極めて大きいものになっている!!!
Samsungの「Exynos 8890」は、Exynos 8895の前世代品であるが、これは14nmプロセスで製造されている。GPUコアを12個搭載しているが、10nmプロセスのExynos 8895では20個とMP数を一気に1.67倍に増やしてグラフィック能力を高めている。2017年の代表的な製品は10nmプロセスによって生み出された。
2017年は、2018年に報告する予定のAIチップも数多く世に出回ったが、一方でモバイル系プロセッサもAI向けの機能IP(Intellectual Property)をプロセッサに搭載した。各社によって呼び名は若干異なる。Exynos 8895では「Vision Processing Unit」、Apple A11 BIONICは「Neural Engine」、HiSiliconの Kirin 970は、AI向けと明言した「Neural Processing Unit」を搭載している。QualcommではCPU+GPU+DSPの組み合わせでAI機能を実現しているという。
いずれも、従来のCPU+GPUという構造から、CPU+GPU+アクセラレータという構造を用いるに至っている。アクセラレータの中身はDSPのケースもあるが、FP16(16ビット浮動小数点)、INT8(8ビット整数)などの小規模な回路を用いた並列演算器を用い、低消費電力でレイテンシの良いもので作り上げている。こちらについての詳細は次回以降に紹介したい。
弊社では中国製、台湾製、米国製などのAIプロセッサを現時点で複数入手しており、チップ開封の上で現在顕微鏡などを用いて構造を解析しているところだ。特に中国系、台湾系は、既に複数の端末での採用が始まっている。
表2は、過去10年間の半導体の新プロセスの商用化年表である。研究開発や試作発表などの年号では若干異なる数字になっている場合もあるが、実際に販売された製品の年号である(ただしメモリを除くプロセッサでまとめである)。
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