エネルギーハーベストによる自立電源化は、以下の(1)〜(4)の4つの要素がバランスした時に成り立つといえる。
(1)発電量
ハーベスターの持つ定格発電量の大きさはもちろん、環境にどの程度依存するかも重要である。オフィス内の温湿度を計るセンサーに室内光による発電デバイスを付けた場合、窓際と倉庫やトイレなどでは1万ルクスから数百ルクスまでの幅がある。
(2)消費電力量
センサーや通信モジュールがどのくらい電気を食うのかは、実測してみないと分からないことも多い。
特に無線通信は、つながりにくい場合の再送や通信していない時の待機電力を、条件を変えて測定してみる必要がある。
(3)蓄電量
電力システムと同様、(1)と(2)の隙間を埋めるためやタイムシフトのためには蓄電デバイスは必須であるが、必要に応じた最小の蓄電デバイスを選定しなくてはならない。
(4)コスト
いわずもがなである。電池やAC電源でよければそれに越したことはない。
組込みシステム技術協会(JASA) エネルギーハーベスティングワーキンググループ(WG)では、ハーベスター、通信モジュールやCPU、蓄電デバイスを調査し、エネルギーハーベスティングが適するシーンと適さないシーンを判断できるようなツールを整備していく計画を持っている。
利用者視点に立ったニーズ指向と、ハーベスターの技術の研究というシーズ指向の両面から研究を行っている当WGの活動に興味のある方は、JASA事務局までお問い合わせいただきたい。
業務系や勘定系といったいわゆるIT分野に対し、組込みシステム(ET)では、制御装置や自動車、家電といった具合に、CPUやOSがまちまちである。
それぞれのシステムに応じて適した電子部品やソフトウェアモジュールが選択される。PC市場で大きな売上を誇るIntel(インテル)に対して、ルネサス エレクトロニクスは多種多様なCPUシリーズをスケーラブルに展開し、さまざまな組込み市場に食い込むといった違いである。
再生可能エネルギー分野では太陽光と風力がそのほとんどを占めており、技術プラットフォームの違いはそれほど大きくないため、ビジネス面では規模の論理が働く。つまり、広まると導入コストが下がる。
これに対してエネルギーハーベスティングは多種多様な技術をさまざまな利用シーンに合わせて提供していかなくてはならず、ET分野のようにラインアップと提案力を持つベンダーが必要とされるだろう。
ただ現在では、ルネサス エレクトロニクスのように1社でさまざまな業界をカバーできるような製品ラインアップを用意しているハーベスターメーカーはなく、規模の論理が働いていない。
プラットフォーム共通化による規模の論理のITと太陽光パネルの値段が下がってきている再生可能エネルギーの類似性、バラエティや組み合わせが特長のETとシーンによって使い分けるエネルギーハーベスティングの間の類似性が浮かび上がってくる。
その一方で、ビッグデータ収集から活用までの多くの事例や、インダストリー4.0といったキーワードに代表されるように、ITシステムとETシステムは融合を進めて境界線がなくなってきている。
エネルギーハーベスティングも再生可能エネルギーや従来の集中電源と組み合わせて、地球全体のエネルギーという視点から活用方法が探られていくことになるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.