QualcommによるNXP Semiconductorsの買収は、詳細な調査を理由に承認を長引かせていたEUからも承認が下りた。残るは中国だけだ。一部の観測筋は楽観視しているが、Qualcommには“弱み”もある。
Qualcommは、中国の“大親友”になれるのだろうか。
その可能性はあるが、現在はまだ、大親友の座に登り詰めるには程遠い状況にある。
しかし、国際ガバナンスイノベーションセンター(CIGI:Centre for International Governance Innovation)のシニアフェローを務めるDieter Ernst氏は、「Qualcommは現在、自らのビジネスモデルを変更することにより、中国に貢献できる役立つ存在になろうと、必死に取り組んでいる。同社は、中国の“大親友”の座を獲得することはまだできないが、“友人”としてのイメージを作り上げようとしているのだろう」と述べている。
Qualcommは現在も、NXP Semiconductorsの買収計画に対する中国政府の承認を待っているさなかだ。しかし、こうした中で、Qualcommは2018年1月25日、中国最大手のスマートフォンメーカーであるLenovoとOppo、Vivo、Xiaomiの4社が、QualcommのRFフロントエンドソリューションを複数年にわたり調達する覚書に署名したことを発表した。
さらにQualcommは、LenovoとOppo、Vivo、Xiaomi、ZTE、Wingtechの中国メーカー6社との協業による、「5G Pioneer」イニシアチブも発表している。同グループの目標は、2019年の発表が予定されている、商用5G(第5世代移動通信)対応の高性能デバイスの供給を加速させることだという。
Qualcommは現在、Appleとの間で特許係争を抱える他、Broadcomに敵対的買収を仕掛けられるなど、米国をはじめとする世界各国で問題を抱えている。こうした中で同社は、中国・北京で2018年1月25日に、「Qualcomm China Tech Day」を開催した。Qualcommはこのイベントを、中国当局と米国メディアに取り入るために開催したのではないだろうか。同社は大勢の米国記者たちに対し、同イベントについてアピールしていた。
この華やかなイベントは、保留状態にあった同社のNXPの買収計画が、EUと韓国の独占禁止法当局によって承認された直後に開催されている。
しかし、現在もまだ、中国商務部(MOFCOM)による規制上の問題が立ちはだかっている。
一部の観測筋は、最終的には中国の承認を受けられると楽観視しているようだ。そこでEE Timesは、Ernst氏のような中国通として知られる人物をはじめ、複数の情報筋と接触することにより、今後中国が、Qualcommに有利になるような政策変更を行う可能性について調査した。
Ernst氏は、「私の知る情報筋からも、Qualcommが現在、中国のスマートフォンメーカーや、中国国家発展改革委員会(NDRC:National Development and Reform Commission)の5Gプロジェクトに対して、積極的な関わりを持っているようだと聞いている」と述べる。
また同氏は、中国に精通した情報筋からの報告として、「米国のトランプ大統領の貿易関連の政策にもよるが、QualcommのNXP買収計画が中国国内で問題になることはないはずだ」と述べている。
楽観的な見解に対する主な根拠として挙げられるのは、中国がNXPの活動分野において、それほど力を持っていないという点だ。つまり、NXPは、コネクテッドカーや自動運転車に向けた半導体チップの分野に強みを持つため、Qualcomm/NXPの合併により、中国の「Intelligent & Connected Vehicles Program」も恩恵を享受できるといえる。
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