豊田通商傘下の半導体/エレクトロニクス商社であるネクスティ エレクトロニクスが組み込みソフトウェア開発体制の強化に積極的だ。2017年10月以降、4社のソフトウェア開発関連企業に出資し資本業務提携を結んだ他、パートナーと共同出資で2つのソフトウェア開発会社を設立した。なぜ、組み込みソフトウェア領域で積極投資を行っているのか、ネクスティ エレクトロニクス社長の青木厚氏に聞いた。
豊通エレクトロニクスとトーメンエレクトロニクスが合併し2017年4月1日に誕生した半導体/エレクトロニクス商社であるネクスティ エレクトロニクス(以下、ネクスティ)が、組み込みソフトウェア領域への積極投資を行っている。2017年10月には車載ソフトウェア開発会社4社との資本業務提携を締結。さらに、2017年12月には東芝マイクロエレクトロニクスと、2018年2月にはフィックスターズと、それぞれ組み込みソフトウェア開発を目的にした共同出資会社を設立している。
組み込みソフトウェア分野への積極投資の狙いは何か。まもなく発足1年を迎えるネクスティの社長を務める青木厚氏に、事業概況などとともに聞いた。
EE Times Japan(以下、EETJ) 発足1年目である2017年度(2018年3月期)の事業はいかがですか。
青木厚氏 全般的に(当初の予想より)上振れしている。数年前の暗い時期から比べると、随分と明るくなった印象だ。2017年度の売上高目標4900億円については、上回れる見通し。2018年度も、まだ業績計画を策定中だが、当然、2017年度から上積みを図らなければならないと考えている。
EETJ 発足1年目から、組み込みソフト開発企業への出資や、組み込みソフト開発を主体とする共同出資会社の設立が相次ぎました。一連の投資の狙いをお聞かせください。
青木氏 ネクスティは、豊田通商グループの中で分散していたリソースを持ち寄り、“技術”“品質”“機能”という3つの要素それぞれを高め、グローバルの半導体/エレクトロニクス商社になろう、という意図で発足した。ここ半年間で実施してきた投資は、“技術”の部分の強化策であり、組み込みソフトウェアの開発力強化を狙っている。
旧豊通エレクトロニクスの人員を中心にネクスティは、600人ほどのソフトウェアエンジニアを有し、これまでも組み込みソフトウェア開発領域の強化を進めてきた。しかし、昨今では、自前の強化では、簡単には手が届かない領域、例えば自動運転向けソフトウェア開発領域などが出てきた。自動運転では、高度な画像認識技術、メニーコアを使用した処理技術、さらにソフトウェア開発手法もより大規模な開発プロジェクトに対応することが必要になっている。
そこで、これまでも付き合いのあった開発パートナーの中で、自動運転車など次世代自動者向けソフトウェア開発で、Win-Winの関係を構築できるであろうパートナーと資本業務提携や共同出資会社設立を通じた体制作りを模索してきた。結果的に半年間のうちに投資の発表が相次いだわけだが、これまで温めてきたことが同じような時期に結実した格好だ。
EETJ 一連の投資は、ネクスティの主力ビジネス領域である自動車市場でのソフトウェア開発力強化を意図したものなのですか。
青木氏 まずは、自動車市場を主体にして、パートナーと体制作りを行うが、将来的には自動車市場以外への横展開もにらんでいる。用途市場を問わず、顧客の困りごとをまとめて解決できることを目指している。
EETJ それぞれの投資の狙いをお聞かせください。
青木氏 まず、2017年10月に発表した4社*)との資本業務提携については、“気持ち”の部分が大きい投資だ。4社はそれぞれ、とがった技術を持つベンチャー企業であり、ネクスティはそうした優れた技術を広めるという面でサポートするために数パーセント程度の出資を行った。出資を行うことで、4社とネクスティは、単なるパートナーではなく、パートナー以上の関係であるという“気持ち”を社内外に示す狙いで出資、業務提携に至った。
*)移動体や家電向け基本ソフトや人工知能技術などの開発を手掛ける「アックス」、モデルベース開発関連技術を持つ「インテグレーションテクノロジー」、各種システム開発・コンサルティング業務などを手掛ける「ソルクシーズ」、組み込みソフト/ハード開発を行う「未来技術研究所」の4社。
EETJ 東芝デバイス&ストレージの完全子会社である東芝マイクロエレクトロニクスとは共同出資会社「ネクスティ システムデザイン」(出資比率=ネクスティ51%、東芝マイクロエレ49%)を設立しました。
青木氏 東芝マイクロエレは、東芝グループ内向けのビジネスとともに、東芝グループ以外でのビジネス拡大を目指しチームがあり、そこと連携することで共にビジネスを広げていこうという意図がある。東芝マイクロエレには、画像系技術をはじめ、バッテリーマネジメント技術やメモリ関連技術など幅広い応用分野で高い技術力がある。そうした東芝マイクロエレの技術力と、ネクスティのプロジェクトマネジメント力、ビジネス創出ノウハウを組み合わせて、事業規模の拡大を狙う。
EETJ ネクスティ システムデザインと、ネクスティ本体のソフト開発部門はどのようにすみ分けされていくのですか。
青木氏 基本的に、自動車向けのプロジェクトはネクスティ システムデザインを中心に実施していく。
EETJ 並列処理技術などをコアに持つフィックスターズとは、「Fixstars Autonomous Technologies」(出資比率=フィックスターズ66.6%、ネクスティ33.4%)を設立されました。
青木氏 社名に“Autonomous”(自律的な)を含んだ通り、少し将来を見据えて自動運転などの次世代自動車に向けた開発ビジネスを創出していきたい。フィックスターズは、メニーコア技術や人工知能(AI)を組み込む技術を持っている。そこにわれわれのプロセッサなどの商材を組み合わせていく。(プロセッサメーカーなどの)サプライヤーに対しても、フィックスターズとの連携はアピールになると考えている。
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