今回から数回にわたり、2017年12月に開催された「IEDM」で行われた車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座の模様を紹介していく。
半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前日に「ショートコース(Short Course)」と呼ぶ1日間のセミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、「Memories for the future: device, technologies, and architecture(将来に向けたメモリデバイスの技術とアーキテクチャ)」と題したショートコースが開催された。このショートコースでは6本の技術講座が午前から午後にかけて実施された。
その中から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」が興味深かったので、その概要を今回からシリーズでお届けする。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
自動車は、非常に数多くのマイコン(マイクロコンピュータ)によってさまざまな制御を実施している。エンジン、ブレーキ、ステアリング(ハンドル)、サスペンション、シート(座席)、ドア、ウインドウ(窓)、空調、衝突検知、エアバッグなどの制御である。これら制御用マイコンのほぼすべてが、不揮発性メモリを内蔵する。
車載用マイコンが不揮発性メモリを内蔵する、具体的には同じシリコンダイにCPUと不揮発性メモリを混載する理由はいくつかある。プログラムとデータのセキュリティを確保する、データの転送速度を高める、データ転送の遅延時間を短くする、消費電力を低減する、電磁妨害に影響されにくくする、実装占有面積を小さくする、などだ。
マイコンの埋め込み不揮発性メモリ技術はふつう、フラッシュメモリである。標準型EEPROMを内蔵することもある。内蔵フラッシュメモリの記憶容量は、1Kバイト〜16Mバイトと幅広い。
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