中国が、半導体産業に新たに2000億人民元(約3.3兆円)の資金を投じるという。専門家の中には、「中国が技術の後れを取り戻すには、相当の投資が必要になるだろう」との声もある。
中国政府は、新たに2000億元(約3.3兆円)の資金を投じることにより、中国国内の半導体チップ産業を促進するための取り組みを更新し、輸入半導体製品の膨大な貿易赤字を相殺していきたい考えだという。
この件に詳しい匿名筋の情報に基づいた報道によれば、中国国家IC産業投資基金(CICIIF:China Integrated Circuit Industry Investment Fund Co.)は現在、政府機関や企業との間で、新たな資金調達について話し合いを進めているところだ。報じられた計画によると、2018年後半には資金を分配し始める予定だという。
米国の市場調査会社であるIC Insightsのプレジデントを務めるBill McClean氏は、EE Timesのインタビューに対し、「中国半導体業界を活性化させるには、いくら資金を追加しても足りないだろう」と指摘する。
「中国にはばく大な資金力があるが、競争力のある技術を実現するという点では、かなりの後れを取っている。新たな資金を投じるという今回の取り組みは、資金力と技術力の両方で相当な結果を出せない限り、成功する見込みはほとんどないだろう」(同氏)
今回の新たな投資は、CICIIFがかつて行った投資と同じ道をたどることになるようだ。CICIIFは2015年に、生産能力やプロセス技術などで、中国国内の半導体メーカーが世界半導体業界に対して数世代の後れを取っているという状況を受け、国内メーカーの設立を後押しするために設立された。これまでに投じられた資金は、合計で1060億元に達し、その約77%が第1段階で提供されている。この投資により、地方政府や民間部門から、さらに追加で3500億元を引き出すことになった。
前回の投入資金は、Yangtze Memory Technologies(YMTC:長江ストレージ)などのメモリチップメーカーの設立や、シンガポールのSTATS ChipPACといった組み立て/テストメーカーの買収などに充てられた。それでも、Lattice Semiconductorなど他の海外の半導体メーカーを買収する試みに関しては、米国から国家安全保障上の懸念を理由に阻止されている。
ここ数年、世界半導体業界が数千億米ドル規模の合併買収の波に襲われている中、中国はそれを傍観する存在だった。業界で統合が進んだことにより、現在では、数少ない大規模メーカーが優勢を振るう形となっている。
EE Timesが調査を行ったアナリストたちによれば、中国は、12インチウエハーの新しい製造工場を約10カ所に設立するとしていることから、今回の新たな提供資金を最も多く獲得するのは、東京エレクトロン(TEL)などの半導体製造装置メーカーではないかとみられている。
香港のBernsteinでアナリストを務めるMark Li氏は、「中国の投資は、効果的な“触媒”として機能するだろう。TELはこれまで、中国国内で市場シェアを拡大し続けてきた企業だ」と述べる。
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