中国は、メモリチップ製造分野における基盤の構築を目指し、新しい資金計画を進めているところだ。同分野は数十年前、日本や韓国、台湾の新興半導体メーカーにとって、市場への入り口となっていた。
しかし今回の場合、参入の障壁を乗り越えるのは非常に困難なことになるだろう。
McClean氏は、「YMTCなどの中国メモリメーカーは、製造を開始する時点で、Samsung ElectronicsやMicron Technology(以下、Micron)などの業界トップに対して、少なくとも2世代の後れを取っていることになる。さらに、潜在的な特許侵害といった法的なハードルに直面する可能性もある」と述べる。
中国は、国内の消費量が膨大であることや、市場シェアの大半を中国機器メーカーが確保していることなどから、中国製メモリを使用する中国国内メーカーに対して、インセンティブを提供する可能性がある。あるアナリストのレポートによると、中国は近い将来、世界のDRAM供給量全体の約5%、NAND型フラッシュメモリ供給量全体の約4%に相当する売上高を達成できる見込みだという。ただし、知的財産権の侵害や最先端技術に関しては考慮しないものとする。
中国はこれまで、ある程度の成功を見込み、旧エルピーダをはじめとする多くの製造メーカーが破綻に陥った日本や台湾から、坂本幸雄氏のようなメモリチップ分野のベテランを引き抜いてきた。旧Micronの子会社である台湾Inotera Memoriesの幹部を務めた経歴を持つCharles Kao氏は、中国語でのインタビューの中で、「現在メモリ市場で優勢を確立しているSamsungやSK Hynixに対抗するための取り組みの一環として、YMTCのCOO(最高執行責任者)として迎え入れられた」と述べている。
また同氏は、「YMTCは、同社にとって初となる64層積層プロセスを用いた3次元構造のNAND型フラッシュメモリ(3D NANDフラッシュ)の製造を、間もなく開始する予定だ」と明かしたが、具体的な時期については触れなかった。同氏によると、YMTCは2017年末までに、32層積層プロセスの3D NANDフラッシュのサンプル出荷を開始する予定だったという。
Kao氏によると、米ワシントンD.C.では現在も、政治的敵対勢力が強いが、YMTCにとっては、世界第3位のメモリメーカーであるMicronと協業するチャンスがあるという。中国は数年前に、Micronの買収を試みたが、最終的に米国政府によって阻止されている。
中国半導体メーカーTsinghua Unigroupの共同プレジデント兼ストレージアーム担当チーフエグゼクティブを務めるQi Lian氏は2018年3月1日、報道関係者に対し、「われわれは、独自に開発した技術を提供し、中国製品の市場シェアを拡大していくことにより、世界的な巨大メーカーに対してバランスを取る役割を担いたいと考えている。この目標を達成すべく、独自の研究開発施設を設立し、世界的な技術協力関係に注目しているところだ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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