ドナルド・トランプ米大統領が大統領令を発令し、BroadcomによるQualcommの買収を阻止した。国家安全保障を脅かす可能性があるからだという。
ドナルド・トランプ米大統領は2018年3月12日(現地時間)、BroadcomによるQualcomm買収を禁止する大統領令を発令したという。Broadcom側は「発令を精査している」としつつ、Qualcommを買収することが国家安全保障を脅かす可能性につながるという点には、強く反対している。
実現すれば、半導体市場最大規模の買収であった、1170億米ドルの取引をめぐる一連の動きは、今後数カ月以内に終息するだろう。大統領令には、今回の買収が「ワイヤレス通信、特許、製品において米国の地位を脅かす可能性がある」というCFIUS(対米外国投資委員会)の懸念が引用されていたという。
大統領令では、Qualcommに対し、2018年4月に延期していた株主総会を今後10日以内に開催することを要求しており、Qualcommはこれを受けて3月23日に開催する予定だ。
今回の大統領令は、Broadcomが2018年3月上旬に、CFIUSへの書簡で「米国が5G(第5世代移動通信)分野のリーダー的ポジションを維持するために貢献する」ということを約束したにもかかわらず、発令された。Broadcomは、米国の次世代のRFエンジニアに向けた教育や訓練のために、15億米ドルのファンドを創設すると発表している(関連記事:IntelがBroadcomの買収を検討か)。また、Broadcom側は、同社がイーサネットスイッチなど通信のコア技術に、長年にわたり投資していることを主張している。
Broadcomが、今回の大統領令に挑む意志を持っているかどうかは明らかではない。BroadcomのCEO(最高経営責任者)であるHock Tan氏は2017年11月初旬、トランプ大統領と会談し、本社をシンガポールから米国に移転すると述べていた。本社の移転は、2018年4月には完了する予定だった。
今回の大統領令によって、Qualcommは、独立した企業体制を維持できることとなった。現在Qualcommは、NXP Semiconductorsの買収を中国当局が承認するのを待っている状態だ。さらにQualcommは、Appleや、社名が伏せられている顧客企業(Huaweiではないかといわれている)と、特許係争が続いていて、その決着もまだついていない。
BroadcomがQualcommに提案していた買収は、Broadcom史上、最大の取引だった。現Broadcom(旧Avago Technologies)は2016年に旧Broadcomを370億米ドル(当時の金額で約4.6兆円)で買収。2017年には、通信機器向けの半導体ベンダーであるBrocadeを55億米ドルで買収した。
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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