統合が進み過ぎるのは良いことではない。米国の市場調査会社であるABI Researchで主席研究官を務めるStuart Carlaw氏は、「あるソリューションを1つのメーカーが独占する事態は喜ばしいことではない」と指摘する。
Carlaw氏は、「BroadcomがQualcommを買収したら、新生Broadcomは、Wi-Fi市場の59%、Bluetooth市場の46%、ロケーションチップ市場の67%、RF市場の41%のシェアを握ることになる見通しだった。このような独占的状況は、聞いたことがないし、何よりも不健全だ」と述べている。
トランプ大統領の動向が、半導体業界、特にBroadcomの買収合併に対する意欲を失わせるとは考えにくい。当初の見通しでは、Broadcomは、2018年4月にも本社を米国に移転させるとされていた。それに向けて、有線ネットワーキング事業を拡大すべく、XilinxやMellanoxにも注目していたのである。
Gwennap氏は、「Broadcomのビジネスモデルは買収を中心に構築されている。同社のCEOのHock Tan氏は、他社のイノベーションを買収することで同社を成長させてきた。MellanoxとXilinxは、同氏が買収したいと考えるタイプの企業だ」と述べている。
IBSのJones氏は、投資家に多くの利益をもたらしたHock Tan氏のビジネスモデルに賛同しているが、別の買収ターゲットを据える必要性を示唆している。
同氏は、「MellanoxとXilinxは、Broadcomに大きな変化をもたらすことはないだろう。Tan氏は、コスト削減と大幅な収益成長を望んでいる。そのためには、AMDやIntel、ルネサス エレクトロニクス、NXP Semiconductors、Infineon Techonologies、STMicroelectronicsといった、年間売上高規模が50億米ドル以上の企業を買収することを検討する必要がある」と指摘した。
Gwennap氏は、「業界全体は、依然として買収が促進されるような環境にある。半導体の製造コストが高騰する中、規模の経済を獲得することは、あらゆる半導体企業にとって望ましいことだ。金利が低く、株価が高い状況が続く限り、より大きな取引が行われる可能性が高い」と指摘している。
Jones氏によると、アナログ企業の買収を繰り返してきたTexas Instruments(TI)も、買収のターゲットになっているという。同氏は、「Intelは数多くの買収案を検討しているとみられている。また、Googleなどの大手Web企業は、より多くの半導体企業を買収することで利益を高めることができる」と述べている。
Tirias Research のKrewell氏は、「皮肉なことに、Broadcomは、今回の買収阻止によって買収のターゲットになっている。2018年3月9日には、IntelがBroadcomの買収に関心を示していると報じられた」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.