今後、半導体プロセスの微細化を進めていく上で、「微細化が本当に利益につながるのか」という疑問が出ているようだ。
エンジニアたちには今後、5nm/3nm/2nmプロセス技術の実現に取り組んでいく上で、幾つかの選択肢が用意されている。しかし、「利益を絞り出すことができるのかどうかは、5nmプロセスでさえも定かでない」とする声が上がっているようだ。
現在、半導体チップのさらなる小型化を実現するためには、複雑さとコストが増大する一方であることから、減速の傾向が強まりつつある。Qualcommの設計技術チームでエンジニアリング担当シニアディレクターを務めるPaul Penzes氏は、Synopsysユーザーグループのイベント会場において、パネル討論に参加し、「モバイルプロセッサのクロック周波数は3GHzでピークに達し、面積と消費電力の点で得られる利点も、7nmプロセス以降は少なくなっていくとみられている」と述べている。
また同氏は、「10mmプロセスでは16%の高速化を実現できているケースもあるが、7nmプロセスでは、金属配線の抵抗が障壁となるだろう。低消費電力化にしても、10nmプロセスでは30%減となったが、7nmプロセスでは10〜25%減と、減少幅が少なくなる見込みだ。小型化については、10nmプロセスの37%減から、7nmプロセスでは20〜30%減にとどまるとみられている」と述べる。
エレクトロニクス業界はこれまで数十年間にわたり、いわゆる「ムーアの法則」を実現する形で、集積回路に搭載する素子の数を増やしてきた。その結果、PCからスマートフォンに至るさまざまな製品において、かつてないほどの小型化と高速化、低コスト化が迅速に達成されてきたのである。
Penzes氏は、「面積に関しては、現在も堅調に小型化が進んでいるが、マスクのコストなどが増加していることから、実際のコストの優位性や技術改良の速度は減り始めている。5nmプロセスで、どんな利点が残るのかは現時点では不明だ。5nmプロセスは、単に7nmプロセスの拡張版にすぎないという可能性もある」と指摘する。
SynopsysとSamsung Electronicsの技術者たちは、パネル討論において、「既存のFinFETは、5nmプロセスでも使われるだろう。FinFETは、フィン幅が約3.5nmを下回った時点でハードウェア的限界に達するとみられている」と述べている。
Synopsysのフェローを務め、トランジスタの専門家であるVictor Moroz氏は、「設計者たちは今後、薄い水平ナノワイヤを、恐らく3層、積層する方向に移行していく必要があるだろう。これに関してはSamsungが、4nmプロセス向けにゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタを使用し、2020年までには製造を開始する計画であると発表している。
Moroz氏は、「ピッチの微細化は今後、1世代当たり約0.8倍に減速していく見込みだ。このためセルの高さは、7nmプロセスでは2フィン/6トラックで約228nmだが、3nm/2nmプロセスでは5トラック/1フィンで130〜100nmまで縮小しなければならない」と述べる。
さらに同氏は、「このような技術を適用すれば、2nmプロセスまで微細化できる可能性は高まる。それ以降は、グラフェンなどを活用していくことになるだろう」と語った。
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