ノキアは、ReefSharkをRF側とベースバンド側に適用していく予定だ。
RF側としては、ReefSharkによって、Massive MIMO送受信機の大幅な小型化を図ることができるとしている。ReefSharkが従来のチップセットに比べて小型になっているので、大量のチップセットを搭載するMassive MIMO機器も、小型化できることになる。実は、ReefSharkの開発の主要メンバーは、もともとノキアで携帯端末向けチップの開発に携わってきたメンバーだったという。ReefSharkは基地局向けのチップセットとはいえ、小型のチップを設計するノウハウを持つエンジニアたちが開発に携わったことは非常に大きいと、三浦氏は述べる。
日本のオペレーターとして、いち早くMassive MIMOの導入に取り組んだのはソフトバンクだが、そこまで普及させることができていない。その最大の理由が、Massive MIMO機器が小型化できていないからだ。三浦氏は、「既存のMassive MIMO送受信機の重さは約40kgある。日本の工事基準では、2人で運ばなくてはならない重さだ」と説明する。つまり、Massive MIMO機器を小型化することで、工事費を削減でき、普及を加速できると三浦氏は述べる。
ノキアは、ReefSharkを搭載したMassive MIMO送受信機として2機種を開発している。1つが、送受信機(TRX)数が16個の機器、もう1つが同64個の機器である。16TRXだと重さが最小で4kg、64TRXは最小20kgなので、設置工事で2人がかりで運ぶ必要がなくなる。ただし、40kg品は128TRXなど、送受信機を多く搭載しているので、そうした既存品に比べると電波を送信する能力は小さい。ただ、三浦氏は、「例えば東京都心のような、人口が過密な場所だと、電波を強く送信する必要はない。干渉するからだ。そのため、16TRX、64TRXでも十分だと考えている」と説明した。Massive MIMO送受信機が小型化されれば、より低コストでMassive MIMOを導入できるようになり、普及が加速する可能性がある。
ReefSharkのチップセット群のうち、ベースバンドプロセッサには、機械学習エンジンを搭載することを想定している。電波やユーザーの利用状況などをリアルタイムでモニタリングおよび分析し、それらの分析結果から、電波を最適化するために、機械学習の活用が考えられている。ReefSharkのベースバンドプロセッサは、こうした機械学習の演算が十分に行えるくらいの性能を持っている。
5Gの具体的なデモとしては、通信機器「AirScale」の新製品を20機種展示した。これらはソフトウェアのアップグレードで5G機能をサポートできるようになるという。Realsharkを搭載したMassive MIMO送受信機、ベースバンドユニットの他、無線部とベースバンドユニットを一体化したモデルなども展示した。
2017年12月に標準規格の初版が策定された「5G NR(New Radio)」については、ノキアのフィンランド研究所でデモを行い、バルセロナのMWC会場では、ライブ映像として、そのデモを見せた。MWCの会場では、免許の関係で、5Gの電波を送信することができなかったからだ。フィンランドにいる説明員が、研究室で28GHz帯の電波を送信しながら5G NRについて解説し、来場者は、AR(拡張現実)ヘッドセットを装着して、その解説を聞いた。実際には目に見えないビームフォーミングなどをARで実現し、より分かりやすくすることが狙いだったという。
さらに、Qualcommの5G対応チップ「Snapdragon X50」を搭載したユーザー端末を用いて、4Kのライブ映像を5G(28GHz帯)で配信するデモも行った。このデモでも、やはり電波は飛ばせないので、5G NRの電波を同軸ケーブルに流すことで対応した。ノキアソリューションズ&ネットワークスでカスタマーマーケティングマネジャーを務める小美濃貴行氏によると、「MWC 2018の会場には5G対応のチップや端末がいくつか展示されていたが、実際に5G対応のモノを動かすデモを展示していたのはノキアだけだったと聞いている」という。
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