情報通信研究機構(NICT)ワイヤレスネットワーク総合研究センターは、5G(第5世代移動通信)の実証試験を行い、端末機器約2万台を同時に接続して通信できることを確認した。
情報通信研究機構(NICT)ワイヤレスネットワーク総合研究センターは2018年3月29日、5G(第5世代移動通信)の実証試験を行い、約2万台の端末機器を同時に接続して通信できることを確認したと発表した。
5Gは、通信速度が極めて高速で低遅延であること、多くの利用者が同時に接続し通信可能なこと、といった特長が期待されており、その性能確認と具体的な利用シナリオに基づいた実証が求められている。NICTは今回、イトーキやエイビット、シャープ、ソフトバンクと共同で、5Gの多数同時接続に関する調査を実施した。
具体的には、5Gに対応した基地局と端末機器のプロトタイプ機、5G多数端末模擬装置を用いた。評価システムでは、2万台のGrant Free方式を用いた端末機器が通信エリア内で送信できる環境を構築した。
Grant Free方式は、データ送信前に基地局側からの事前許可(Grant)を不要とした無線チャンネルへのアクセス方法。これにより、送信のオーバーヘッドを低減できるが、通信の衝突による情報欠損も発生するため、送信側は繰り返し送信などの対応が必要となる。
この実験では、Grant Free方式で端末機器2万台分の情報を約70秒間で全て送信することが可能なことを確認した。この時の通信帯域幅は10MHzで、各端末機器から5秒間隔で情報をサーバ側に送信。サーバ側では情報の着信が10秒以上ないと、データが欠損したという条件で計測した。従来の通信システムであるLTE方式の場合、一度に約100台の端末で接続を試みると接続不能となる可能性があることも分かった。
さらに、NICTなどは5Gを利用したスマートオフィスの通信環境についても試験も行った。この環境はスマートテーブルとスマートチェア、電子ホワイトボードで構成される。スマートテーブルには3.7GHz帯に対応するアンテナを内蔵し、机上の限定空間のみで極めて高速な通信を可能とした。
スマートチェアには姿勢検出用のセンサーと省電力無線機を内蔵する。今回はBLE(Bluetooth Low Energy)を使用して機能の確認を行った。電源は太陽光パネルで発電した電力のみを用い、情報をクラウド側に送信する仕組みとなる。
電子ホワイトボードは、テレビ会議システムの機能に加えて、ホワイトボード上の描画をリアルタイムに遠隔地と共有することができる機能を搭載した。低遅延のため双方で同時に書き込む共同作業もできるという。
NICTは今後、多数同時接続を含めて5Gの通信性能を最大化するために、通信事業者間の協調制御や自営マイクロセルシステムの統合を容易にする技術の開発などに取り組む。これらの成果は、国際標準化団体である3GPPに方式提案する予定としている。
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