中国製のドライブレコーダーを分解し、内部のチップを開封すると、中国メーカーがチップを設計する能力、いわゆる“インプリ力”が見えてくる。
あおり運転など、悪質なドライバーによる事件や事故の報道が相次いだ2017年。事故の証拠を残せるだけでなく、事故に至らなくとも、危険なドライバーや出来事などを記録したいというニーズの高まりもあり、ドライブレコーダーがあらためて注目されている。
ドライブレコーダーは簡単に後付できるカー用品であり、価格的にも数千円から数万円と比較的リーズナブルだ。電源だけ接続すれば良いものから、OBD-IIコネクターを接続し、車両情報と連動させるものなど、さまざまな種類がある。
多くは、フロントウインドやダッシュボードにカメラを設置し、電源やGPSの配線をつなぐだけで使用可能になる。高級機では、リアカメラを含めた2画面同時の画像処理を行うものもある(あおり運転で後方接近するクルマの悪質運転を記録するためにはリアカメラが必要になる)。カー用品店やホームセンターなどで売られているので、入手も取り付けも簡単な商品だ。
カー用品を扱う大型量販店などには多くの種類の製品が売られており、日本メーカーの製品も多いが、半数以上は台湾、中国、韓国などの製品だ。形状も、コンパクトデジカメのようなカメラ型から、ルームミラーに装着して使うミラー型、PND(Portable Navigation Device)と一体化したナビゲーション+ドライブレコーダー、さらに、レーダー探知機と組み合わせた商品もある。
ドライブレコーダーは、世界的に装着率の高い商品だ。クルマに故意にぶつかってくる、いわゆる“当たり屋”の悪質な行為を記録するために、装着率が100%に近い国もあるという。
ドライブレコーダーの多くは、上記のようなアジアから全世界に多くの商品が輸出されている。弊社では欧州や米国で販売されるドライブレコーダーも輸入して調査しているが、ほとんどの製品は中国製だ。中国製スマートフォンを一般に「中華スマホ」と呼ぶが、中国製ドライブレコーダー「中華ドラレコ」も、スマホに並んで非常に広く普及している(海外では日本製はほぼ皆無である)。
今回扱うのは、その中の1台で、中国TOMTOPのドライブレコーダー「CACAGOO」だ。図1にCACAGOOの梱包物一覧、機能宣伝の一部を掲載する。カメラ一体型の本体にGPSアンテナ、そして電源ケーブルの3点セットで構成される。ビデオは本体の裏に装着され、画質はHD (720p)/30fps(フレーム/秒)である。ドライブレコーダー機能だけでなく、Wi-Fiチップも搭載しているので、スマートフォンとの連動も可能となっている。
2017年に市場に投入された中国や韓国、台湾製のドライブレコーダーの多くは、単に記録するだけでなく、各種の簡易的なADAS(先進運転支援システム)機能も備えている。
CACAGOOは、前方車間距離の監視(接近警告)、前方車両始動警告(発進を促す)、車線逸脱警告などの機能が備わっている。Intelが買収したMobileyeの第2世代画像処理チップを搭載した単眼カメラ(これは世界的にヒットした)と、同程度の機能を持っているのだ。
中国製ドライブレコーダーのこうしたADAS機能は敏感すぎて、警告が多過ぎるというユーザーの声もあるが、一方で日々ライブラリやソフトウェアの改良、改善がされており、バージョンアップによって、より実用性の高いものになっているという意見もある。
いずれにせよ、ドライブレコーダーを買ったら、簡易ADAS機能も付いてますという“お買い得商品”が、現在の中国製ドラレコだ。事故を起こさないため(もしくは事故になり得たポテンシャルの記録)の「お守り」としては、価格的にもリーズナブルなものだといえるだろう。
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