大阪大学大学院基礎工学研究科の馬場基彰招へい教員らは、互いに逆回転する電子と電磁波が一体となって回転(一体化)することを実証した。量子コンピュータにおけるノイズ問題の解消につながるとみられている。
大阪大学大学院基礎工学研究科の馬場基彰招へい教員らは2018年4月、互いに逆回転する電子と電磁波が一体となって回転(一体化)することを実証したと発表した。量子コンピュータにおけるノイズ問題の解消につながる研究成果として注目される。
今回の研究について馬場氏は、横浜国立大学の吉岡克将氏、米国ライス大学の河野淳一郎教授やシンウェイ・リー氏らと協力して行った。
磁場中で回転運動する電子が、同じ向きに回転する電磁波と結合し、一体となって回転(一体化)することは、これまでも報告されてきた。しかし、互いに逆回転する電子と電磁波の一体化は、これまで観測されたことがなく、その現象自体も認識されていなかったという。
河野氏らの実験グループは今回、米国パデュー大学のマイケル・マンフラ教授らによる研究グループが作製した半導体膜試料を電磁波の共振器に組み込み、電子と電磁波が高く協同するようにした。さらに、共振器に照射する電磁波の回転方向を制御した上で、共振する回転速度と磁場の強さについて測定した。
この結果、電子の回転運動と逆回転する電磁波でも、共振する回転速度が磁場との関係で変化する様子を観測することができた。馬場氏は、このような動きが逆回転する電子と電磁波の一体化であることを、論理的にも示した。
量子コンピュータや量子情報通信など、電磁波を用いた量子情報処理の実用化に向けて、ノイズ問題が課題となっている。既に、逆回転する電子と電磁波の一体化によって、ノイズの影響を受けない光子を作り出せることは知られているという。今回の研究成果をベースに、電磁波を自由に制御できる技術を確立することで、量子情報処理におけるノイズ問題を解決できる可能性もある。
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